アメリカのヒューマノイド(人型)ロボット開発企業「アジリティ・ロボティクス」は、特別買収目的会社(SPAC)との合併を通じて株式を公開する計画を明らかにしたと発表しました。調達額はヒューマノイドロボット業界で過去最大規模となる見通しですが、同社のCEOは、家庭用ロボットの普及にはまだ時間がかかるとの認識を示しています。
現在、ヒューマノイドロボット市場には多額の資金が流入しています。中国の深センに拠点を置く「AI2ロボティクス」は約1139億円(7億3500万ドル)を調達し、企業評価額は約4650億円(30億ドル)に達しました。また、アメリカの「アプトロニック」は約1449億円(9億3500万ドル)を調達し、評価額は約8525億円(55億ドル)となっています。さらに、「フィギュアAI」は約1550億円(10億ドル)を調達し、評価額は約6兆450億円(390億ドル)に上ると報告されています。
こうした中、アジリティ・ロボティクスのペギー・ジョンソンCEOは、慎重な姿勢を崩していません。同社は、特別買収目的会社(SPAC)である「チャーチル・キャピタル・コーポレーションXI」との合併による上場計画を発表しました。この取引による企業評価額は約3875億円(25億ドル)で、約961億円(6億2000万ドル)以上の資金調達が見込まれています。これは同業界で過去最大の規模となります。合併は株主の承認や証券取引委員会の審査を経て、今年後半に完了する予定だということです。
アジリティ・ロボティクスは2015年にオレゴン州立大学からスピンオフして設立されました。倉庫や工場での作業を目的とした二足歩行ロボットを開発しています。今回の上場により、同社はヒューマノイドロボット専業企業として初めて公開市場で取引されることになります。これまで主に巨大な資金力を持つベンチャーキャピタルに限られていたこの分野に、一般投資家が直接投資できる機会を提供するとしています。
ジョンソンCEOは、かつてマイクロソフトで約4兆300億円(260億ドル)規模のリンクトイン買収を主導した経歴を持ちます。その後、拡張現実(AR)ヘッドセットを手がけるマジックリープのCEOも務めました。同氏は今後の財務見通しや主力ロボット「ディジット(Digit)」の部品コストの公表を控え、推測に基づく質問には慎重に回答しました。
通常の新規株式公開(IPO)ではなくSPACを通じた上場を選んだ理由について、ジョンソンCEOは「先行者利益」を挙げました。調達した資金は、オレゴン州にある製造施設の生産能力拡大や、既存の顧客からの受注への対応に充てる方針です。
SPAC上場については、2021年に上場した多くの企業が株価を大きく下げるなど厳しい見方もあります。しかし、ジョンソンCEOは「顧客やロボット一つ一つに確実に対応していくことで、同様の価格変動は避けられると考えています」と述べました。
同社はすでに実証実験の段階を超えており、月額料金制のサービスモデルを通じて約1000台のロボットの導入が決まっています。これによる複数年の予約売上高は約465億円(3億ドル)に上るということです。顧客には、アマゾンやGXOロジスティクス、トヨタ・モーター・マニュファクチャリング・カナダなどが含まれています。
主力ロボットの「ディジット」は、身長約175センチメートル、体重約72キログラムで、人間の作業空間で重い物を運ぶことに特化しています。特徴的な逆関節の膝を持つことで、棚にぶつかることなく床から頭上の棚まで手を伸ばすことが可能です。
また、同社は特定のAI言語モデルに依存せず、複数のモデルを活用して高度な指示をロボットの動作に変換する技術を採用しています。実際のテストでは、「この散らかったものを片付けて」という指示に対し、ロボットがゴミを正確に分類して捨てることに成功したということです。
ジョンソンCEOは、同社の最大の強みは10年以上にわたる現実環境での運用データに基づく「物理的なAI」にあるとしています。さらに、競合他社との最大の違いは安全性にあると強調し、「ロボットを作ってから安全にするのではなく、最初から安全性を証明した設計が必要です」と指摘しました。
一方、家庭用ロボットの普及については「10年以上先になる」との見通しを示しました。倉庫や工場と異なり、家庭環境は予測不可能で複雑なためです。当面は、人手不足が深刻化している倉庫や工場での需要に対応することに注力する方針です。
