アップルが支援する新たな研究により、行動データが従来の生体測定よりも強力な健康シグナルとなる可能性があると発表しました。この研究では、ウェアラブルデバイスから収集した行動データを基にした基盤モデルを開発し、高精度での予測が可能であることを示しました。
この研究は「Beyond Sensor Data: Foundation Models of Behavioral Data from Wearables Improve Health Predictions」というプレプリント論文として発表され、アップルの「Apple Heart and Movement Study(AHMS)」の一環として行われました。研究者たちは、25億時間以上のウェアラブルデータを基に新たな基盤モデルを訓練し、既存の低レベルセンサーデータに基づくモデルと同等、またはそれ以上の性能を示したということです。
このモデルは「WBM(Wearable Behavior Model)」と名付けられ、従来の健康関連モデルが主に生のセンサーデータに依存していたのに対し、WBMはステップ数や歩行安定性、移動性、最大酸素摂取量(VO₂ max)などの高次の行動指標から学習します。
研究によれば、消費者向けウェアラブルデバイスは多様な健康領域について豊富な情報を提供しており、静的な健康状態(喫煙歴や高血圧診断歴など)や一時的な健康状態(睡眠の質や妊娠中であるかどうかなど)を検出することが重要であるとしています。これらの予測に必要なデータは、通常、人間の行動の時間的解像度(例えば、日や週)であり、ウェアラブルから収集される生のセンサーデータの低レベル時間スケール(例えば、秒単位)ではないということです。
WBMは、Apple WatchとiPhoneからのデータを基に訓練されました。161,855人の参加者から収集されたデータは、アクティブエネルギー、歩行速度、心拍変動、呼吸速度、睡眠時間など27の人間が解釈可能な行動指標に変換され、新しいアーキテクチャ「Mamba-2」を通じて処理されました。
57の健康関連タスクで評価した結果、WBMは18の静的健康予測タスクでPPGベースの強力なモデルを上回り、動的タスクでは全てのタスクで優れた性能を示しました。特に妊娠検出では92%の精度を達成しました。
研究はセンサーデータをWBMで置き換えるのではなく、補完することを目指しています。WBMは長期的な行動シグナルをキャプチャし、PPGは短期的な生理的変化を捉えることで、両者を組み合わせることでより早期に意味のある健康の変化を検出できるとしています。