アメリカのIT大手アップルは、ティム・クック最高経営責任者(CEO)が9月1日付けで退任し、後任にハードウェアエンジニアリング担当シニアバイスプレジデントのジョン・ターナス氏が就任すると発表しました。クック氏は15年間にわたり経営トップを務め、同社を時価総額およそ4兆ドル(約620兆円)の巨大企業へと成長させました。
クック氏は1998年にアップルに入社し、2011年に創業者のスティーブ・ジョブズ氏の後を継いでCEOに就任しました。就任当時の時価総額は3500億ドル(約54兆2500億円)を下回っていましたが、その後、2018年に1兆ドル(約155兆円)、2020年に2兆ドル(約310兆円)、2022年に3兆ドル(約465兆円)と順調に拡大しました。現在、同社の時価総額は4兆100億ドル(約621兆5500億円)に達し、就任時から10倍以上に成長したということです。
また、2025年9月期の純利益は1120億ドル(約17兆3600億円)となり、2010年同期と比べておよそ8倍に増加しました。新型コロナウイルスの感染拡大や米中間の対立といった課題に直面しながらも、大幅な成長を遂げたとしています。かつて最高執行責任者(COO)としてグローバルなサプライチェーンの構築を主導したクック氏は、CEO就任後も中国市場での展開を強化し、世界中で新たにおよそ200の直営店を開設しました。
製品面では、iPhoneやMacといった主力製品に加え、周辺機器やウェアラブル端末の拡充を進めました。2015年には「Apple Watch」を発売し、血中酸素濃度や心電図の測定機能を備えた健康管理デバイスへと進化させました。さらに、2016年にワイヤレスイヤホン「AirPods」を発売し、市場に大きな変化をもたらしたほか、2014年にはオーディオブランドの「Beats」を買収しています。
一方で、2024年には空間コンピューティング端末として「Apple Vision Pro」を発売しましたが、数十万円という価格設定もあり、消費者への普及には課題を残しているということです。このほか、iPadのラインナップを多様化し、仕事や教育現場で幅広く活用できる端末へと成長させました。iPhoneについても、普及価格帯の「iPhone SE」の投入や、顔認証機能「Face ID」の導入など、重要な機能強化を指揮しました。
クック氏の功績として、サービス事業の拡大も挙げられます。2014年に開始した決済サービス「Apple Pay」は、現在世界でおよそ8億1800万人が利用していると推計されています。また、動画配信の「Apple TV+」、音楽配信の「Apple Music」、ゲームの「Apple Arcade」など、多様なサブスクリプションサービスを立ち上げました。クラウドサービス「iCloud」も大幅に成長したほか、アプリ配信サービス「App Store」の運営においては、30%の手数料体系を維持する方針を貫きました。
2025年9月期のサービス事業の売上高は1091億6000万ドル(約16兆9200億円)に上り、全体の売上高4161億6000万ドル(約64兆5000億円)の重要な柱となっています。
技術の自立化に向けた戦略として、2020年からはパソコンの頭脳にあたる半導体をインテル製から自社開発の「Apple Silicon」へと移行し、2023年までにMacの全モデルで切り替えを完了しました。これにより、バッテリー駆動時間の延長や処理性能の向上を実現したとしています。
一方、人工知能(AI)の分野では、2024年に独自のAI機能「Apple Intelligence」を発表しました。しかし、音声アシスタント「Siri」の刷新が遅れるなど、他社に比べて開発の遅れが指摘されています。生成AIの開発競争においては、グーグルのAI「Gemini」を次世代ツールに採用する方針を明らかにしています。
クック氏は昨年、アメリカのトランプ大統領とともに、国内での雇用拡大や製造拠点の強化に向け、6000億ドル(約93兆円)規模の投資計画を発表しました。半導体や先端技術の国内サプライチェーンを強化する方針です。
さらに、2017年にはジョブズ氏の構想を引き継ぎ、新本社「Apple Park」を完成させました。1万2000人以上の従業員が働くこの施設は、100%再生可能エネルギーで運営されており、現在では同社の新製品発表の舞台となっています。
