アメリカ財務省は、中国のAI企業がアメリカ企業のAIモデルの技術を不適切に利用した疑いがあるとして、制裁を科す可能性があると警告したと発表しました。
ホワイトハウスの科学技術政策局のクラツィオス局長は、中国のAI企業「Moonshot(ムーンショット)」が、アメリカのAI企業「Anthropic(アンスロピック)」のモデル「Fable」を不適切に利用したと指摘しました。具体的には、「蒸留」と呼ばれる手法を用いて、自社のモデルの学習に無断で活用した疑いがあるということです。
モデルの蒸留とは、小規模なAIモデルが大規模なモデルの出力結果から学習する一般的な手法です。正当な最適化の手法として広く利用される一方で、知的財産権の侵害にあたる可能性も指摘されています。
これを受け、ベセント財務長官はSNS上で、「オープンソースだからといって、アメリカの知的財産を自由に利用してよいわけではない」と強調しました。その上で、「中国企業が知的財産の窃盗にあたるような大規模な蒸留を隠れて行った場合、制裁や事実上の禁輸措置の対象となる『エンティティリスト』への追加を検討する」としています。同長官は今週初めにも、中国のオープンソースモデルについて知的財産窃盗の調査を行い、違反があれば制裁を科す方針を示していました。
さらにクラツィオス局長は、Moonshotがアメリカの半導体大手Nvidia(エヌビディア)の最新チップ「GB300」を搭載したサーバーをタイで利用し、AIモデルの学習を行った可能性が高いと主張しています。GB300はNvidiaの最新世代「Blackwell」シリーズに含まれ、アメリカ政府の輸出管理規則により中国企業への販売が禁止されており、同社がこの規則に違反した疑いがあるということです。
一方で、一部の専門家からは、Anthropicの「Fable」が7月1日に公開されたばかりであることから、Moonshotの最新モデル「Kimi K3」が主にFableからの蒸留によって開発されたという見方には疑問の声も上がっています。Moonshotが先週公開したK3は高い性能を示しており、最先端のAI開発において巨額の投資を必要とするアメリカの主要AI企業のビジネスモデルに影響を与える可能性があるとされています。
今回の事態を受け、アメリカ政府内では中国製のオープンモデルの流入に対する警戒感が高まっています。専門家の一部からは、アメリカの技術的優位性を保ち、国家安全保障上のリスクを軽減するため、中国製モデルの利用を制限、あるいは事実上禁止すべきだという意見も出ているということです。
