AI企業のアンソロピックは10月3日、アメリカ政府の三権、すなわち行政、立法、司法の各機関に対して、AIモデル「Claude」を1ドル(約155円)で提供すると発表しました。この提供は1年間の契約で行われるということです。
この発表は、OpenAIが連邦政府の行政機関に対し、AIツール「ChatGPT Enterprise」を1ドルで提供することを発表した直後に行われたものです。アンソロピックの動きは、OpenAIの競争に対抗するための戦略的なものであり、政府におけるAI利用の拡大を目指しているとしています。
アンソロピックは声明で、「アメリカの公共部門が最先端のAI技術にアクセスできることが重要であり、科学研究や市民サービスなどの複雑な課題に対応できるようにしたい」と述べています。また、広範なアクセスと厳格なセキュリティ基準を組み合わせることで、AIが公共の利益に役立つよう支援するとしています。
「Claude for Enterprise」と「Claude for Government」の両方が提供され、後者はFedRAMP Highの基準を満たしているため、連邦政府職員が機密性の高い非公開業務を扱うことができるとしています。
FedRAMP Highは、政府の非公開機密データを扱うための厳格なセキュリティ基準です。アンソロピックは、AIツールをワークフローに統合するための技術サポートも提供するとしています。
アンソロピックは、OpenAIやGoogle DeepMindとともに、国防総省から最大2億ドル(約310億円)の資金を受けており、国家安全保障のためにAIを活用する方針です。しかし、科学研究や健康サービスを含む、より広範な政府業務への統合を目指しています。
アンソロピックは、既にローレンス・リバモア国立研究所で科学的発見を加速するために「Claude」が使用されているほか、ワシントンD.C.の保健局でも多言語での市民サービス提供に役立てられているとしています。
「Claude」は政府の最高セキュリティ基準を満たしているため、既存の安全なインフラを通じてAWS、Google Cloud、Palantirとのパートナーシップを通じてアクセス可能です。これにより、顧客はデータの管理をよりコントロールできるとしています。
このマルチクラウドアクセスは、OpenAIとの競争において優位に立つ可能性があります。OpenAIのFedRAMP High提供はAzure Government Cloudに限定されているためです。Azureは政府で広く採用されていますが、一部の政府機関やセキュリティチームは、データ主権やインフラのコントロール、運用の柔軟性を重視する可能性があります。
OpenAIは、Azureへの依存を減らし、より多様化したインフラを採用する方針です。