アメリカの防衛テクノロジー企業「アンドゥリル(Anduril)」が、企業価値を約1000億ドル(約15兆5000億円)とする新たな資金調達に向けて協議していることが明らかになりました。同社はこれまでにも大規模な資金調達を実施したと発表しています。
ロイター通信が匿名の関係者の話として伝えたところによりますと、今回の資金調達により、同社の企業価値は400億ドル(約6兆2000億円)上昇し、およそ1000億ドル(約15兆5000億円)に達する可能性があるということです。
同社は今年5月に、企業価値610億ドル(約9兆4550億円)の評価で50億ドル(約7750億円)を調達したと発表しています。これは、2025年6月のシリーズGラウンドでの評価額305億ドル(約4兆7275億円)からほぼ倍増した計算になります。今回の調達は2段階で行われ、第2段階ではより高い評価額で投資家を募る方針だとされています。両方の手続きが年内に完了する見通しだということです。
こうした動きの背景には、防衛テクノロジー産業の急速な復活があります。中東や東ヨーロッパでの紛争が続く中、無人機(ドローン)や自律型兵器、そして軍事分野における人工知能(AI)への需要が急増しているためです。今年上半期におけるこの分野のベンチャー資金調達額は、前年同期の2倍以上となる120億ドル(約1兆8600億円)を超えました。これは、2025年全体で関連スタートアップが調達した100億ドル(約1兆5500億円)をすでに上回る規模となっています。
アンドゥリルはこうした需要を取り込み、アメリカ国防総省や空軍、陸軍のほか、オランダ国防省、NATO(北大西洋条約機構)、イギリス国防省、ポーランド政府などと契約を結んでいます。同社が5月に明らかにしたところによりますと、2025年の収益は前年比で2倍以上となる22億ドル(約3410億円)に達したと発表しています。
他の防衛スタートアップ企業も資金調達を加速させています。軍用機メーカーのシールドAI(Shield AI)は3月に15億ドル(約2325億円)を調達しました。また、マッハ・インダストリーズ(Mach Industries)は先月、企業価値を4倍の18億ドル(約2790億円)に引き上げました。さらにヨーロッパのヘルシング(Helsing)も今月、企業価値180億ドル(約2兆7900億円)の評価で18億ドル(約2790億円)を調達したということです。
これらの企業に共通する事業戦略は、従来の防衛産業が提供してきた高価な装備品から、より安価で消耗可能なハードウェアへの移行です。これは「アトリタブル(消耗型)」システムと呼ばれています。マッハ・インダストリーズのイーサン・ソーントン最高経営責任者(CEO)は、ウクライナにおける自律型ドローンの運用をモデルとして挙げ、従来の防衛関連企業よりも大幅に低いコストで現代の戦闘システムを設計する方針を示しています。
さらに、マッハ・インダストリーズとアンドゥリルの両社は、自社で推進システムの供給網を確保する動きを進めています。マッハ社は5月に固体ロケットモーター製造のイクスクアドラム(Exquadrum)を5000万ドル(約77億5000万円)で買収したと発表しました。一方、アメリカ国防総省は、アンドゥリルによる国内の固体ロケットモーター製造能力の拡大を資金面で支援しています。これは、低コスト兵器の普及に先立って課題となっていた供給網のボトルネックを解消するための措置だということです。
調査会社ピッチブックによりますと、アンドゥリルの投資家には、スライブ・キャピタルやアンドリーセン・ホロウィッツなどの有力ベンチャーキャピタルのほか、アメリカのJD・バンス副大統領も名を連ねています。
今回の報道について、アンドゥリルは声明を出し、「将来の資金調達について決定した事項はなく、条件や時期などに関する主張は推測に基づくものか、誤った情報です。非公開企業として、事業成長のための資金調達の機会は定期的に評価しています」としています。
