アメリカの半導体大手、エヌビディア(Nvidia)は、データセンターでの水の使用量を大幅に削減できる新たな冷却システムを開発したと発表しました。一方で、AI(人工知能)を稼働させるための発電において大量の水が消費されていることから、根本的な問題解決には至っていないという指摘が出ています。
エヌビディアの発表によりますと、新たに開発されたのは温水を利用した冷却システムです。同社の幹部は、このシステムによりデータセンター内の水の使用量を「ほぼゼロ」にすることができるとしています。また、同社のサステナビリティ担当責任者は、メディアの取材に対し「データセンターの水消費に関する課題は大部分が解決された」と述べています。
しかし、このシステムが対象としているのは、データセンターの施設内で消費される水に限られているということです。システム自体は、冷却水を密閉されたループ内で循環させる仕組みとなっています。施設が稼働している間は同じ水が再利用されるため、半導体を冷却するための新たな水は消費されません。気候条件が整えば、施設内での水の使用量を100%削減できるとしています。
このシステムは、45度の冷却水をサーバーのラックに送り込むというものです。人間にとっては高温ですが、コンピューターの半導体にとっては十分な冷却効果があります。サーバーを通過した後の冷却水は55度になり、ハードウェアから大量の熱を奪うということです。この温度であれば、多くの地域において、蒸発冷却やファンを使わずに外気で熱を逃がすことが可能です。これにより、水の使用量を減らすだけでなく、エネルギー効率を高め、騒音を抑える効果も期待できるとしています。
一方で、データセンターの外部、特に発電や半導体の製造において消費される水は、施設内で使用される水の2倍から3倍に上るという指摘があります。つまり、エヌビディアの新たなシステムが解決できるのは、AIデータセンター全体の水消費量の4分の1から3分の1程度にとどまるということです。
データセンターの稼働には大量の電力が必要ですが、発電所自体が大量の水を消費しています。アメリカ地質調査所によりますと、アメリカ国内の化石燃料発電所は1日あたりおよそ27億ガロン(約100億リットル)の水を消費しており、その大部分が蒸発冷却に使われているということです。最近の研究では、天然ガス発電所は1キロワット時の電力を発電するのに1.17リットルの水を消費し、石炭火力発電所ではさらに多い2.2リットルを消費するとされています。国際エネルギー機関(IEA)によりますと、現在、データセンターで使われる電力のおよそ半分は化石燃料によって賄われています。
また、データセンターの電力の約10%を供給している水力発電も、直接水を消費するわけではありませんが、貯水池からの蒸発により、1キロワット時あたり6.8リットルの水が失われているということです。これに対し、風力発電や太陽光発電などの再生可能エネルギーは、水の使用量が極めて少なく、それぞれ1キロワット時あたり0.01リットル、0.03リットルにとどまっています。
現在、新たな電力供給源として再生可能エネルギーの割合が増加しています。しかし、IEAの予測によりますと、2030年までに増加するデータセンターの電力需要を満たすため、その40%以上を天然ガスや石炭が担う見通しだということです。この傾向が大きく変わらない限り、エヌビディアが施設内での水使用量を削減したとしても、データセンター全体としては引き続き大量の水を消費することになると指摘されています。
