アメリカの半導体大手、エヌビディアのジェンスン・フアンCEOは、人工知能(AI)の安全性について、新たな法規制は必要なく、市場のメカニズムや企業の技術的な対応に委ねるべきだとする見解を発表しました。
フアンCEOは、アメリカのIT大手セールスフォースがこのほど開催したイベントで講演しました。この中で同氏は、AIは人間が開発したハードウェアとソフトウェアに過ぎず、既存の法律と人間の手によって十分に制御できるとしています。
フアンCEOは「安全性は法律ではなく、エンジニアリングの問題だ」と指摘しました。そのうえで、新たな法律や規制を設ける必要はなく、自由市場の競争原理によって、企業は安全性が確認できない製品の公開を控えるようになるということです。
また、技術革新のスピードと製品の安全性は両立できると強調しました。「企業は可能な限り開発を急ぐべきだが、製品の制御が難しくなったり、安全性が確保できなくなったりした場合は、立ち止まって軌道修正を図る必要がある」としています。
一方で、AI市場の急速な拡大によって大きな利益を上げているエヌビディアにとって、開発の妨げとなる規制を回避したいという思惑があるとの見方もあります。フアンCEO自身も「AIによる生産性の向上により、当社の成長やあらゆる産業の可能性は無限に広がっている」と述べており、さらなる事業拡大に意欲を示しています。
しかし、IT業界では過去に、ソフトウェアの不具合が大規模なシステム障害を引き起こした事例や、SNSが子どもに与える悪影響をめぐって、アメリカのメタが180億ドル(約2兆7900億円)の和解金を支払う事態も起きています。AIについても、すでに予期せぬ動作や利用者への悪影響が報告されており、企業の自主的な対応にのみ依存することへの懸念も根強く残っています。
現在、世界のIT業界では、AIの安全性に関する自主規制の枠組み作りが模索されています。マイクロソフトのサティア・ナデラCEOが、アメリカだけでなく中国の企業も巻き込んだ安全基準の共有が必要だと訴えるなど、国際的な協調を求める声も上がっています。
こうした中、AI向け半導体市場を牽引するエヌビディアのトップが規制に否定的な姿勢を示したことは、今後の国際的なルール作りの議論に影響を与えるものとみられます。
