パフォーマンス向上薬(ドーピング)の使用を容認するスポーツ大会「エンハンスト・ゲームズ」を主催するアメリカの企業「エンハンスト・グループ」は、最新の第2四半期決算で6200万ドル(約96億1000万円)近い純損失を計上したと発表しました。
この大会は今年5月にネバダ州ラスベガスで開催されました。著名投資家のピーター・ティール氏らが支援し、暗号資産やAI(人工知能)、バイオテクノロジー業界の出身者が運営に携わっています。プロスポーツ界で禁止されている薬物の使用を認めることから「ステロイド・オリンピック」とも呼ばれ、スポーツ界を根本から変えるイベントとして注目を集めていました。
しかし、大会での世界新記録樹立は記録が更新されやすい水泳競技での1件にとどまり、競技面での成果は乏しい結果に終わりました。さらに、今週発表された決算によりますと、大会の開催費用が膨らみ、巨額の赤字につながったということです。
エンハンスト・グループは2023年に設立され、今年初めに12億ドル(約1860億円)の評価額で新規株式公開(IPO)を果たしました。同社は本来、オンライン診療プラットフォームを通じて、FDA(アメリカ食品医薬品局)が承認したペプチドやテストステロン、減量用のGLP-1などの個別化医療を提供する事業を主力としています。
第2四半期の売上高は1770万ドル(約27億4000万円)でしたが、その大半は大会のスポンサー収入であり、本業であるオンライン診療事業の収益状況は不透明だということです。経営陣はこれまで大会を毎年開催する方針を示していましたが、今回の巨額の赤字を受け、方針転換を迫られています。
同社は新たに「エンハンスト・ブレーカーズ」と呼ばれるオンライン配信シリーズを開始し、大会開催よりも大幅にコストを抑えながら、スポンサーや視聴者の関心をつなぎとめる方針です。
一方で、同社を取り巻く健康補助食品やバイオハッキングの産業は成長を続けています。トランプ政権下のFDAは最近、これまで法的な位置づけが曖昧だった複数の物質の分類を見直す決定を下しました。販売の全面的な解禁には追加の審査が必要ですが、政府が規制緩和に前向きな姿勢を示しているということです。
FDAを所管する厚生省(HHS)のトップには、健康分野で独自の主張を展開してきたロバート・F・ケネディ・ジュニア氏が就任しています。同氏の考えには医療専門家から危険視する声も上がっていますが、業界の勢いは衰えていません。
シリコンバレーでは、テクノロジー業界の健康志向を背景にペプチド関連のスタートアップ企業が次々と誕生しており、急速な市場の拡大に州政府などの規制対応が追いついていない状況だということです。
