アメリカのIT大手「オープンAI」は、アメリカ政府の要請を受け、最新の人工知能(AI)モデル「GPT-5.6」の提供を、信頼できる少数のパートナー企業に制限して開始したと発表しました。
オープンAIが発表した次世代モデル「GPT-5.6」のラインナップには、最上位モデルの「Sol(ソル)」、日常的な利用に適したバランス型の「Terra(テラ)」、そして高速かつ低コストな「Luna(ルナ)」の3種類が含まれています。同社によりますと、トランプ政権からの制限措置により、これらすべてのモデルの公開が制限されており、現在は政府と共有されたパートナー企業のみがプレビュー版を利用できるということです。
今回のアメリカ政府による要請は、最先端のAIシステムに対する規制を強化する動きの一環とみられています。先日も、競合企業のアンスロピックが最新モデル「Fable 5」を公開した際、アメリカ政府が外国籍の利用者へのアクセス制限を命じ、結果として同社がモデルの公開を全面的に取り下げる事態となっていました。
元ホワイトハウスAI顧問で、近くオープンAIに入社予定のディーン・ボール氏は、トランプ大統領が最近署名した大統領令について懸念を示しています。この大統領令は、特定のAI企業に対し、公開の最大30日前に最先端モデルを政府の審査に自主的に提出するよう求めるものですが、ボール氏は「事実上の強制的な免許制度となっており、過度な制限を招いている」と指摘しています。さらに、政府の安全基準が明確でないため、公開の遅れが常態化すれば、AI開発競争において中国を利するだけでなく、AIインフラへの巨額の投資を危険にさらすおそれがあるとしています。
オープンAIは今回、政府の要請に応じたものの、こうした措置への不満も表明しています。同社は公式ブログで、「このような政府によるアクセス制限のプロセスが、長期的な標準になるべきではない」としたうえで、「必要としているユーザーや開発者、企業、サイバー防衛の専門家などから、最高のツールを遠ざけることになる」と述べています。
一方で同社は、今回の限定的なプレビュー公開を「短期的な措置」と位置づけています。今後数週間のうちに、より幅広いユーザーへの提供を目指すとともに、サイバーセキュリティーに関する新たな大統領令の枠組みや、将来のモデル公開に向けた継続可能なプロセスの構築に向けて、政府と協力していく方針です。
「GPT-5.6 Sol」について、オープンAIはこれまでで最も強力なモデルであり、プログラミングや生物学、サイバーセキュリティーの分野における自律的な処理能力が向上しているとしています。また、極めて複雑な課題を解決するために、複数のサブエージェントが連携する新たな推論モードも導入されたということです。
性能評価においても、アメリカ政府が今月事実上の禁止措置をとったアンスロピックの「Claude Mythos 5」をプログラミング能力でわずかに上回るほか、出力時のデータ処理量を3分の1に抑えつつ、高い競争力を維持しているとしています。
さらに、強力なモデルの安全性に対する懸念を払拭するため、オープンAIは「Sol」にこれまでで最も堅牢なセキュリティー対策を施したとしています。悪意のある攻撃に対する耐性を高め、サイバー攻撃の手法を提示するのではなく、防御策の構築を優先するよう設計されているということです。
また、安全対策の機能はモデルの根幹に直接組み込まれており、アンスロピックが直面したような、リスクの高い要求を古いモデルに迂回させることで生じる誤検知やユーザーの反発を防ぐねらいがあるとみられます。
オープンAIは、近く「GPT-5.6」シリーズを一般向けの「ChatGPT」や開発者向けのAPIなどを通じて広く提供する計画です。
利用料金は3段階に設定されており、100万トークン(データの処理単位)あたりの料金は、最上位の「Sol」が入力5ドル(約775円)、出力30ドル(約4,650円)となっています。「Terra」はその半額となる入力2.5ドル(約388円)、出力15ドル(約2,325円)で、「Luna」は入力1ドル(約155円)、出力6ドル(約930円)に設定されています。また、繰り返し入力される指示(プロンプト)の処理効率を改善し、コストの削減と安定性の向上を図ったとしています。
