アメリカのIT企業「オープンAI」は、AI(人工知能)を悪用したサイバー攻撃の増加に対応するため、サイバー防衛に特化した新たなAIモデルなどを提供するサービスを拡充したと発表しました。
近年、AIが制御を離れて暴走する事例が日々報告されています。開発プラットフォームへの不正アクセスや、ウェブサイトのハッキング、さらには偽のプロフィールを作成して人為的な隙を突く攻撃など、AIモデルが悪意のある攻撃者のように振る舞うケースが増加しています。
こうした事態を受け、AI開発企業はサイバー防衛向けのサービスを強化しています。オープンAIは今週、今年初めに提供を開始したサイバー防衛サービス「Daybreak(デイブレイク)」を拡充したと発表しました。これは、競合するアンソロピック社がサイバー防衛に特化したモデル「Mythos」を発表した直後の動きとなります。
「Daybreak」は、システムの防御を担う担当者向けに、AIモデルやツールなどをパッケージ化して提供するサービスです。今回の拡充により、防衛作業に特化した新たなモデルが利用可能になるということです。
オープンAIによりますと、同サービスは「ブルー」と「レッド」の2つの階層で構成されます。承認された顧客は、アクセスが制限されている最先端のサイバーモデルを利用できるようになります。最先端のAIモデルをめぐっては、安全上の懸念から、トランプ政権がAI企業と連携して展開を図る姿勢を示すなど、議論の的となってきました。オープンAIもこれまで、利用目的を制限する厳格な安全対策を講じてきました。
基本的な階層となる「ブルー」では、インシデント(事案)への対応や、悪意のあるソフトウエア「マルウエア」の解析、修正プログラムの検証など、多様なサイバーサービスを提供します。同社はこれを「多くの防衛担当者に推奨される出発点」としており、一般企業のニーズを十分に満たすとしています。
一方、「レッド」の階層では、より広範で高度なツールを提供します。セキュリティーテストや脆弱性の調査を実行するために特別に訓練されたサイバーセキュリティーモデルが利用できるということです。
さらに、「レッド」の階層限定で、新たなモデル「GPT-5.6-Cyber」が提供されます。このモデルは「GPT-5.6 Sol」を基盤として開発され、特定の専門的なサイバーセキュリティー業務において強化された性能を発揮するとしています。
現在、「GPT-5.6-Cyber」は、アクセンチュア、IBM、クラウドストライク、クラウドフレアなど、信頼関係にある一部の提携企業にのみ提供されているということです。
AIによる脅威が急速に高まる中、専門家からは、こうした状況がAI開発企業にとってのビジネスチャンスになっているとの指摘も出ています。オープンAIは公式ブログで、「サイバーセキュリティーの世界は急速に変化しており、悪意のある攻撃者はAIを利用して、かつてない規模と速度で自律的なサイバー攻撃を行うようになる」と警告し、「防衛側が準備できる猶予は狭まっている」としています。
企業の間では、セキュリティー上のリスクを最も熟知しているAI開発企業から直接、防衛技術を導入したいという需要が高まっているということです。
