アメリカのIT大手、グーグルの人工知能(AI)研究を牽引してきたジェフ・ディーン氏をはじめとするトップ研究者らが同社を退社し、独自のAIスタートアップ企業を設立したと発表しました。
共同創業者には、グーグルのシニアフェローであるサンジェイ・ゲマワット氏や、「グーグル・ブレイン」の創設メンバーであるクォク・リー氏、「グーグル・ディープマインド」のシニアリサーチサイエンティストであるオリオール・ビンヤルズ氏など、同社を代表する研究者らが名を連ねています。新会社では、ディーン氏がCEO(最高経営責任者)に就任する見通しだということです。
新会社の名称は「ディスカバリー・ループ」で、公益法人として設立されました。AIを活用して科学研究を飛躍的に加速させることを目標としています。
同社は、高度なアルゴリズムを用いて数千規模の実験を同時に実行し、検証を繰り返す方針です。これにより、研究プロセスを部分的に自動化し、実験の規模を大幅に拡大するとしています。
さらに、AIを利用してより強力なAIを生み出す「再帰的自己改善」と呼ばれる技術にも関心を示しています。これが実現すれば、人間の手による検証作業を完全に省くことが可能になるということです。
同社はプレスリリースの中で、「過去数世紀にわたり、科学と工学は社会を大きく進歩させてきましたが、そのプロセスは人間の手による時間のかかる検証に依存しており、それが大きな障壁となっていました」と指摘しています。その上で、「大規模な計算能力を活用した高度なAIシステムを開発し、実験のサイクルを自動化することで、技術革新のスピードと効率を根本から変革する」としています。
AIを科学的発見に活用する取り組みは、長年にわたり科学技術界で高い関心を集めてきました。しかし、最近までは主に実験的な段階にとどまっており、商業的な応用は限定的でした。
同社が明らかにしたところによりますと、初期の資金調達ラウンドはラディカル・ベンチャーズとコースラ・ベンチャーズが共同で主導しました。また、グーグルの親会社であるアルファベットのほか、クライナー・パーキンス、ライトスピード、ドーア・キャピタルなどの有力な投資家も参加しているということです。
創業チームは共同声明で、「AIの次なる大きなフロンティアは、質問に答えるだけでなく、新たな発見を始めることです。工学や科学の発見の手法を根本的に加速させることで、革新的な技術の恩恵をより早く世界に届けることができます」と述べています。
ディーン氏は1999年に30番目の従業員としてグーグルに入社しました。長年にわたり、情報の収集や索引付け、検索システムなど、同社の検索エンジンの基盤構築に貢献してきました。また、最新のAIモデル「Gemini(ジェミニ)」の開発にも大きな影響を与え、同社の初期のAI研究を主導してきた人物です。
ディーン氏はアメリカのニューヨーク・タイムズの取材に対し、「これまで人間の手作業に大きく依存していた実験のサイクルを、AIによってさらに自動化する機会があると考えています。実験の量と質の両方が向上し、それが科学的なブレークスルーや進歩につながるでしょう」と語っています。
