カナダのAI(人工知能)開発スタートアップ企業「コーヒア(Cohere)」は、ドイツの同業「アレフ・アルファ(Aleph Alpha)」を買収し、事業を統合すると発表しました。アメリカの巨大IT企業が市場を牽引するなか、両国政府の支援のもと、データの管理権を自国や企業で保持する「主権型AI」の開発を強化するねらいがあるということです。
主権型AIとは、企業や政府が自らのデータを完全に管理し、アメリカのIT大手などを経由せずに運用できるシステムを指します。
今回の統合は、対等な合併ではなく、前回およそ68億ドル(約1兆500億円)の企業価値と評価されたコーヒアが新会社を主導する方針です。統合手続きは、規制当局や株主の承認を経て進められるということです。
この統合において、主要な資金の出し手となるのがドイツの小売大手「シュワルツ・グループ」です。同グループはアレフ・アルファの既存株主であり、今回の買収に賛同しています。さらに、新会社に対して5億ユーロ(約825億円)の資金提供を行うとしています。
その見返りとして、新会社のシステムはシュワルツ・グループが運営するクラウド基盤「STACKIT」上で稼働することになります。これにより、同グループは自社のクラウド事業において大口顧客を獲得することになります。
また、コーヒアは新たな資金調達ラウンドを実施し、シュワルツ・グループが筆頭投資家を務める予定です。ドイツの経済紙によりますと、統合後の新会社の企業価値はおよそ200億ドル(約3兆1000億円)にのぼると見込まれています。
コーヒアの今年の年間収益が2億4000万ドル(約372億円)に達する一方で、アレフ・アルファはこれまで収益が伸び悩み、多額の損失を計上していました。しかし、投資家らは両社の統合によって規模を拡大し、巨大な競合他社に対抗できると期待を寄せています。
AI業界では再編の動きが進んでおり、アメリカの起業家イーロン・マスク氏が率いる「xAI」も、フランスの「ミストラルAI(Mistral AI)」などとの提携を模索していると報じられています。
新会社は今後、データのプライバシーや独立性を重視する企業からの需要を取り込む方針です。防衛やエネルギー、金融、医療、製造、通信といった規制の厳しい産業に加え、公共部門を主なターゲットにするとしています。
コーヒアのエイダン・ゴメスCEOは記者会見で、「アレフ・アルファが強みを持つ小規模な言語モデルやヨーロッパ言語への対応は、我々の大規模言語モデルの開発を大きく補完するものです」と述べ、統合の意義を強調しました。
カナダとドイツの両政府は最近、データのプライバシーと安全保障への共通の懸念から、「主権型技術同盟」を立ち上げ、特定の国や企業への技術的な依存を減らす取り組みを進めています。
ゴメスCEOは「コーヒアはカナダとドイツの企業になる」と述べていますが、将来的に株式を上場した場合、特定の国に縛られない世界中の株主が所有することになるため、その方針を維持できるかが課題になるとしています。
