アメリカのトランプ政権が、AI(人工知能)開発企業のアンスロピック(Anthropic)を「サプライチェーンのリスク」に指定し、連邦政府による同社の技術利用を禁止した問題について、連邦地方裁判所の裁判官は、政府側の主張を裏付ける証拠が依然として不十分であるとの見解を示しました。この事案については、アメリカのメディアであるブルームバーグやアクシオスなどが報じています。
この問題は、アンスロピックとアメリカ国防総省(DoD)の間で契約交渉が難航したことに端を発しています。アンスロピック側は、自社のAI技術がまだ未成熟であるとして、アメリカ国民の大規模な監視や、殺傷能力のある兵器の標的決定などに使用されることを拒否する方針を示していました。これに対し国防総省は、民間企業が軍の技術利用の方法を指示するべきではないと反発し、ツールは「合法的な」方法で使用すると主張していました。
政府側は、アンスロピックが国防総省を公然と批判したことが利用禁止の正当な理由になると主張しています。しかし、担当するリタ・リン裁判官はこの論理について「非常に問題がある」と指摘しました。政権に反対する政府の契約業者に対する報復の前例となりかねないと警告しています。
さらに国防総省は、戦闘作戦中にアンスロピックが自社のAIモデルを無効化したり、改ざんしたりする可能性があると主張しています。しかし、専門家はこの主張には証拠がないと指摘しており、リン裁判官もこれに同意しました。納入済みのモデルを同社が改ざんしたり、「キルスイッチ(緊急停止装置)」を作動させたりできるという証拠は見当たらないとしています。
今回の審理は、アンスロピックが利用禁止措置とリスク指定を不服として、今年3月に国防総省を相手取って起こした2件の訴訟のうちの1件に関するものです。もう1件の訴訟は首都ワシントンで審理されています。
リン裁判官は3月に利用禁止措置を一時的に差し止める決定を下しており、現在、この差し止めを恒久的な措置とするかどうかについて検討を進めているということです。
