アメリカの蓄電池スタートアップ企業「フォーム・エナジー」は、ウェストバージニア州にある工場の製造能力を拡大するため、7億5000万ドル(約1163億円)の資金調達を実施したと発表しました。人工知能(AI)向けのデータセンター建設ブームが、エネルギー貯蔵分野への投資を後押ししている形だということです。
アメリカでは今年第1四半期に9.7ギガワット時のエネルギー貯蔵システムが導入され、前年と比べて32%増加しました。一般的な蓄電池の放電時間は数時間程度ですが、フォーム・エナジーが開発する「鉄空気電池」は最大100時間の電力供給が可能だということです。再生可能エネルギーは今年のアメリカの新規発電容量の90%以上を占めると予測されており、天候に左右されやすい電力供給の隙間を埋めるため、長時間のエネルギー貯蔵技術が強く求められています。
同社の電池は、リチウムやコバルト、ニッケルといった高価な鉱物ではなく、鉄を使用することで、大量の電力を低コストで貯蔵できるとしています。放電時に鉄が酸化して「さび」となり、充電時に元の鉄に戻るという化学反応を利用する仕組みです。
この独自技術により、同社は大手企業との契約を相次いで獲得しています。IT大手のグーグルは、ミネソタ州に建設中の新たなデータセンターの一部電力を賄うため、およそ10億ドル(約1550億円)を投じて30ギガワット時規模の同社製蓄電池を導入する方針です。また、クラウドサービス企業のクルーソーが今年3月に12ギガワット時分の蓄電池の購入を発表したほか、電力会社のエクセル・エナジーやフューチャーエナジー・アイルランドなども顧客に名を連ねています。
フォーム・エナジーが使用する原材料の約80%はアメリカ国内で調達されており、残りはヨーロッパやアジアから輸入していますが、中国への依存を避けているのが特徴です。現在、世界の蓄電池サプライチェーンと製造は中国企業が大きなシェアを占めていますが、アメリカ政府は政権を問わず、蓄電池における中国への依存度を下げる方針を打ち出しています。
アメリカでは数十年ぶりに電力需要が上昇しており、国内に重点を置いたサプライチェーンの構築が新たな大型顧客の獲得につながっているということです。需要増加の主な要因はデータセンターであり、2035年までにデータセンターの電力消費量は現在の4倍に達し、アメリカ国内の総発電量の約20%を占めると予測されています。
アメリカの有力紙ウォール・ストリート・ジャーナルによりますと、同社が現在抱える商業プロジェクトの受注残高は約80ギガワット時に上り、今年初めから4倍に急増したということです。
今回の資金調達(シリーズG)は、資産運用大手のティー・ロウ・プライスが主導し、セコイア・キャピタルやブレイクスルー・エナジー・ベンチャーズなど多数の投資家やファンドが参加しました。
