動画生成AIを開発するアメリカの新興企業「Runway(ランウェイ)」の最高経営責任者(CEO)は、映画産業においてAIを活用することで、1本の巨額な予算で多数の作品を制作することが可能になり、ヒット作を生み出す確率を高めることができるとの考えを示しました。
企業評価額が50億ドル(約7750億円)を超えるRunwayの共同創業者でCEOのクリストバル・バレンズエラ氏は、アメリカのメディア企業が主催する経済会議に登壇しました。
この中でバレンズエラ氏は、映画スタジオが1本の長編映画に費やす1億ドル(約155億円)の予算について、「AIを活用すれば、同じ視覚的品質で50本の映画を制作できる」と述べました。そのうえで、制作するコンテンツの量を増やすことで、ヒット作に恵まれる可能性が高まると指摘しています。
映画産業においては、作品は芸術への投資であり、適切なクリエイティブチームを支援することが成功につながると考えられてきました。しかし、バレンズエラ氏の提案は、業界全体を「数のゲーム」と捉えるものであり、クリエイターの間で議論を呼ぶ可能性があります。
バレンズエラ氏は、映画やテレビ制作などの分野にAIを導入することへの反発があることを認めたうえで、「状況は急速に変化している」と述べました。初期の懐疑的な見方は誤解や不安によるものであり、現在では多くの人がAIツールの能力を理解しているとしています。
Runwayは、クリエイターがより質の高い仕事を迅速に行えるよう支援するAIモデルの開発を進める方針です。同社はすでに多くのスタジオやクリエイターと提携しており、技術の導入によって制作コストの削減が進んでいるということです。
実際に、映画業界ではAIによるコスト削減の動きが広がっています。近く公開予定の映画「Bitcoin: Killing Satoshi」では、AIの活用により制作費が当初見積もりの3億ドル(約465億円)から7000万ドル(約108億5000万円)に抑えられたと報じられています。また、アメリカのIT大手アマゾンやインドの映画スタジオ、ソニー・ピクチャーズなどもAIの活用を進めているほか、著名な映画監督も雇用を維持しながら大作映画を制作する手段としてAIを支持する姿勢を示しています。
バレンズエラ氏によりますと、コスト削減の効果は、撮影前の準備段階から脚本制作、計画、視覚効果など、あらゆる工程で現れているということです。
一方で、テクノロジー業界が主張する「AIによる量産が優れた芸術を生み出す」という考え方に対しては、懐疑的な意見も根強く残っています。
これに対しバレンズエラ氏は、現在のコンテンツ制作における経済的な構造が「創造性の危機」を招いていると指摘しました。書籍の出版を例に挙げ、「誰もすべてを読むことはできないが、より多くの人が世界に向けて物語を発信できるようになったことで、世界はより良い場所になった」と述べています。
さらに、「これまで技術にアクセスできなかった何十億もの人々が参加できるようになるため、最高の映画はこれから作られることになる」と述べ、AIの普及が映画産業に革新をもたらすとの期待を示しました。
