アメリカのファッション雑誌「ヴォーグ(Vogue)」は、イタリアのミラノで開催したイベント「ヴォーグ・ワールド」の締めくくりとして、複数の人型ロボットをランウェイに登場させたことを明らかにしました。この演出をめぐり、テクノロジー業界との過度な接近だとして波紋を呼んでいるということです。
「ヴォーグ・ワールド」は、同誌が毎年都市を変えて開催している大規模なイベントで、今年で5回目を迎えます。ファッションショーや著名人の紹介などを兼ねており、これまでにニューヨークやロンドンなどで開催されてきました。今年のミラノ公演は、テクノロジー時代におけるイタリアの職人技と「人間の手」への敬意をテーマにしていましたが、実際の演出はこれとは異なるものになったということです。
「知性の時代」と題されたプログラムでは、中国の企業が開発した人型ロボットが音楽に合わせて会場に登場しました。ロボットは服を着用しておらず、腕を振って観客に拍手を求めるような動作を行いました。この演出に対し、有名ブランドのクリエイティブ・ディレクターが苦渋の表情を浮かべる様子がSNSなどで拡散され、話題となっています。
現地で発表された実際のファッションよりも、ロボットに関する話題が先行している状況です。現在開催中のロンドン・ファッション・ウィークでも、同様のロボットが登場したということです。
ヴォーグは今年、次回のイベントをアメリカのサンフランシスコで開催すると発表しました。同誌の編集長であるアナ・ウィンター氏は近年、テクノロジー業界の有力者との関係を深めています。今回のミラノ公演も、メタ(Meta)のスマートグラス部門が一部スポンサーを務め、オープンAI(OpenAI)も支援を行っているということです。
こうした動きに対し、テクノロジー業界が独自の価値観に偏っているのではないかという指摘が出ています。物価高騰やAIによる雇用喪失、エネルギー問題などが懸念される中、一部の富裕なテクノロジー企業にファッション業界が接近することへの反発も少なくありません。ランウェイを歩くロボットは、現在の社会的な課題を象徴するものだと受け止める声もあるということです。
あるテクノロジー企業の創業者はSNSで、「人々がAIなどの技術によって職を失っている中で、著名人がこうした演出を称賛していることに違和感を覚える」と述べています。
メディア関係者からは、出版業界が新たな収益源を模索する中で、資金力のあるテクノロジー業界と、文化的影響力を持つファッション業界の利害が一致した結果だという見方が出ています。
しかし、今回のヴォーグの手法には不自然さが残るとの声もあります。スタートアップ企業の戦略立案を手がける専門家は、「ランウェイをロボットが歩くという演出は、ファッションとテクノロジーの交差点で実際に起きている革新を全く表現できていない」と指摘しています。
例として、今年のファッションイベントで披露された、技術と芸術を融合させたドレスなどが挙げられています。こうした最先端の取り組みと比較すると、単にロボットを歩かせるだけの演出は表層的だということです。
専門家は、今回のロボットの演出が、テクノロジーとファッションの融合を一般の人々に受け入れやすくするための試みだったのではないかと推測しています。しかし、その試みは成功したとは言いがたく、来年のサンフランシスコ公演でより本格的な展開が示されるのかどうかが注目されています。
