音楽配信大手「スポティファイ」の元技術者らが設立したスタートアップ企業「Malachyte(マラカイト)」は、電子商取引(Eコマース)向けの新たなAI(人工知能)推薦システムを開発するため、シードラウンドで1000万ドル(約15億5000万円)の資金調達を実施したと発表しました。
創業者のシド・モトワニ氏ら3人は、スポティファイで「ベクトルAI」と呼ばれる推薦システムの基盤構築に長年携わってきました。このシステムは、過去の行動履歴だけでなく、利用者の意図や次の行動を予測するよう設計されています。現在、8億人を抱えるスポティファイの推薦機能の約90%を支えているということです。
今回調達した資金は、販売網の拡大や、製品開発および営業部門の責任者の採用に充てられる方針です。同社は、スポティファイで培った技術を電子商取引の分野に応用することを目指しています。
同社によりますと、現在のオンラインストアの多くは、過去の購入履歴や顧客の属性データに基づいて商品の推薦を行っています。そのため、初めてサイトを訪れた人には一般的な商品ページが表示され、既存の顧客には現在のニーズではなく、過去に買ったものに偏った商品が提案される課題があるとしています。
この課題を解決するため、同社は「双頭ベクトルAI」と呼ばれる独自のプラットフォームを開発しました。顧客が次に求める商品を予測し、好みを学習しながら、リアルタイムの行動に基づいて推薦内容を継続的に微調整する仕組みだということです。
モトワニ最高経営責任者(CEO)は、システムはページが読み込まれた瞬間の状況から機能し始めると説明しています。例えば、利用者が「頑丈なブーツ」と検索し、安全靴を2回クリックした場合、アカウント登録や過去の履歴がなくても、作業着や手袋を上位に表示させることができるとしています。サイト内の滞在時間が長くなるほど、また次回の訪問時にも、より関連性の高い商品が提案されるということです。
また、クリックやスクロールなどのあらゆる行動は重要なデータであるにもかかわらず、多くの小売業者がそれをリアルタイムで活用できていないと指摘しています。さらに、夜間にスマートフォンからアクセスする人と、午前中にパソコンからアクセスする人では心理状態が異なるとして、こうした状況を示すデータの活用も不十分だという見方を示しました。
同社は2024年から技術の開発とテストを進め、2025年秋に最初のプラットフォームを本格稼働させました。2026年6月以降は、カナダのIT大手「ショッピファイ」の出店者向けにサービスを提供しているほか、大規模な小売業者向けにもシステムを連携できる仕組みを整えています。
今後は、顧客の行動に対する理解を深め、商品企画とマーケティングを統合していく方針です。なお、今回の資金調達は、投資会社の「ベッセマー・ベンチャー・パートナーズ」と「グラディエント」が共同で主導し、「ハープーン・ベンチャーズ」も参加したということです。
