人工知能(AI)技術が世界を大きく作り変える中、関連する新たな専門用語が次々と生まれています。こうした状況を受け、アメリカのIT専門メディアなどは、最新のAI関連用語を平易な言葉で解説する包括的な用語集を公開したと発表しました。この用語集は、開発者や投資家だけでなく、一般の利用者が技術の動向を正確に把握できるようにすることを目的としているということです。
【汎用人工知能(AGI)】 AGIは、多くのタスクにおいて平均的な人間を上回る能力を持つAIを指します。アメリカのオープンAI(OpenAI)は、AGIを「経済的に価値のある仕事の大半で人間を上回る高度に自律的なシステム」と定義し、開発の目標に掲げる方針です。一方、グーグル・ディープマインド(Google DeepMind)は「大半の認知タスクで人間と同等以上の能力を持つAI」としており、専門家の間でも定義は分かれているということです。
【AIエージェントとコーディング・エージェント】 AIエージェントは、利用者に代わって経費精算や予約などの一連のタスクを自律的に実行するシステムです。さらに、ソフトウェア開発に特化した「コーディング・エージェント」は、コードの記述からテスト、修正までを自律的に行うことができ、開発者の負担を大幅に軽減する技術として注目されています。
【APIエンドポイント】 ソフトウェア同士を連携させるための接続口を指します。AIエージェントが能力を向上させるにつれ、人間の操作なしにこれらの接続口を自律的に見つけて利用し、自動化を進める事例が増加しているということです。
【思考の連鎖(Chain-of-thought)】 AIモデルが問題を小さなステップに分割して推論する手法です。回答までに時間はかかりますが、特に論理的な問題やプログラミングにおいて、より正確な結果を導き出すことができるとされています。
【計算資源(コンピュート)と並列化】 AIモデルを稼働させるために不可欠な計算能力のことです。主にGPUなどのハードウェアが使用されます。また、複数の計算を同時に行う「並列化」の技術は、複雑化するAIシステムを迅速かつ低コストで構築・運用するための重要な要素となっています。
【深層学習(ディープラーニング)とニューラルネットワーク】 人間の脳の神経回路を模した多層構造のアルゴリズム(ニューラルネットワーク)を用いた機械学習の一種です。AIがデータから自ら特徴を抽出し、複雑な相関関係を見出すことを可能にしています。
【拡散モデル(ディフュージョン)とGAN(敵対的生成ネットワーク)】 拡散モデルは、画像や音声などのデータにノイズを加え、それを復元する過程を学習することで新たなデータを生成する技術です。一方、GANは2つのネットワークを競わせることで、より現実的なデータを生成する仕組みであり、特定の用途で高い性能を発揮するということです。
【蒸留(ディスティレーション)とファインチューニング】 蒸留は、大規模なAIモデルから知識を抽出し、より小さく効率的なモデルを作成する手法です。オープンAIの「GPT-4 Turbo」などもこの手法で開発されたとみられています。また、特定のタスクに合わせてAIモデルを再学習させる「ファインチューニング」は、多くの新興企業が自社の専門知識を組み込むための戦略として活用する方針です。
【ハルシネーション(幻覚)】 AIが事実と異なる誤った情報を生成する現象です。医療などの分野では重大なリスクにつながる恐れがあり、業界全体で専門性の高いモデルを開発することで、この問題の解決を図るとしています。
【推論(インファレンス)と学習(トレーニング)】 「学習」はAIモデルにデータを読み込ませてパターンを認識させるプロセスであり、「推論」はその学習済みのモデルを使用して予測や回答を生成するプロセスを指します。
【大規模言語モデル(LLM)】 膨大なテキストデータを学習し、言語の規則性や関係性を処理するモデルです。チャットボットなどの基盤技術として広く利用されています。
【メモリキャッシュ】 計算結果を保存し、推論の効率を高める最適化技術です。これにより、AIが回答を生成するまでの時間と計算コストを削減できるということです。
【モデル・コンテキスト・プロトコル(MCP)】 AIモデルと外部のツールやデータを接続するための標準規格です。アメリカのアンスロピック(Anthropic)が開発し、現在はオープンAIやグーグルなども採用しており、業界標準として急速に普及しているということです。
【専門家混合モデル(MoE)】 ネットワークを複数の専門分野に分割し、特定のタスクに必要な部分だけを稼働させる手法です。これにより、巨大なモデルであっても高速かつ低コストで運用することが可能になります。
【オープンソース】 ソフトウェアの設計図であるソースコードを無償で公開する仕組みです。アメリカのメタ(Meta)などはこの手法を採用し、世界中の研究者と協力して技術開発を加速させる戦略をとっています。これに対し、コードを非公開にする企業もあり、AI業界における大きな議論の的となっています。
【RAM不足(ラマゲドン)】 AI開発の過熱により、データセンター向けのメモリチップ(RAM)が大量に消費され、深刻な供給不足と価格高騰を引き起こしている現象です。これはゲーム機やスマートフォンなど、他の産業にも影響を及ぼしているということです。
【再帰的自己改善(RSI)と強化学習】 RSIは、AIが人間の介入なしに自らを改良し続ける概念です。また、試行錯誤を通じて正しい行動に報酬を与える「強化学習」は、AIの推論能力を向上させ、より安全で役立つモデルを構築するための中心的な手法となっています。
【トークンとトークンスループット】 トークンは、AIが言語を処理する際の最小単位です。企業向けのサービスでは、このトークンの使用量に基づいて料金が設定されることが一般的です。また、一定時間内に処理できるトークンの量(スループット)を高めることは、AIインフラストラクチャにおける重要な目標とされています。
【転移学習】 あるタスクで学習した知識を別のタスクに応用する手法であり、開発の効率化に寄与するということです。
【検証損失と重み(ウェイト)】 検証損失は、AIモデルの学習状況を評価する指標であり、数値が低いほど良好とされます。また「重み」は、入力データの特徴に対する重要度を示す数値であり、AIの出力を決定づける中核的な要素となっています。
関係者によりますと、この用語集は技術の進化に合わせて定期的に更新される方針だということです。
