アメリカの核融合スタートアップ企業「パシフィック・フュージョン」は、核融合発電の商業化に向けた実証施設の建設を、西部ニューメキシコ州で開始したと発表しました。施設全体で消費する以上のエネルギーを生み出すことを目指すということです。
同社の幹部は、「商業用核融合発電に向けた大きな前進であり、アメリカ国内でこれほどの施設が建設されるのは初めてだと認識している」としています。
核融合発電の開発をめぐっては、これまで施設全体の消費エネルギーを上回る出力を達成した実験設備はありません。同社は、2030年までにこの目標を達成し、2030年代半ばには商用発電所の稼働を目指す方針です。なお、商用炉では付帯設備を稼働させるため、今回の実証施設の約5倍のエネルギーを生成する必要があるとしています。
新たな実証施設はニューメキシコ州アルバカーキに建設されます。強力な電力パルスを用いて磁場を発生させ、消しゴムほどの大きさの燃料を圧縮して核融合反応を起こす技術を検証するということです。
施設には、電力を蓄えて放出する装置が156基設置されます。今年行われた3分の1スケールの試験で良好な結果が得られたため、今回の実証施設の建設に踏み切ったということです。実証施設では1日に数回の反応実験を行う予定ですが、将来の商用炉では1秒間に1回のペースで反応を起こすことが求められます。
さらに、この施設は安全保障関連の実験にも活用される予定です。同社の技術責任者は、「1回のパルスで約100メガジュールのエネルギーを生成でき、これはアメリカ政府の既存施設の約10倍に相当する。中国も同様の施設を建設しているが、我々が世界に先駆けて実現する」と強調しています。
パシフィック・フュージョンは2023年に設立された新しい企業ですが、すでにシリーズAラウンドで10億ドル(約1550億円)以上の資金調達を実施しています。豊富な資金を背景に、数年ごとの資金調達に頼ることなく、長期的な開発計画を進めるとしています。
核融合発電の分野では、「コモンウェルス・フュージョン・システムズ」や「ヘリオン・エナジー」など、豊富な資金を持つ複数の企業が2030年代の送電網への接続を目指しており、実用化に向けた開発競争が一段と激しさを増しています。
