生成AIを用いて楽曲を作成できるサービスを提供するアメリカのスタートアップ企業「Suno(スノ)」は、自社のプラットフォームで作成された楽曲に電子透かし(ウォーターマーク)を導入するなどの新たな対策を講じると発表しました。同社は現在、複数の大手レコード会社などから著作権侵害をめぐる訴訟を起こされており、これに対応する狙いがあるとみられます。
同社の共同創業者でCEO=最高経営責任者を務めるマイキー・シュルマン氏は、公式ブログを通じて企業の基本方針を説明しました。この中で、「AIツールを通じてより多くの人々が音楽制作を行えるようにする一方で、オリジナルの創作活動を促進していきたい」としています。
これまで、AIで生成された楽曲が他の音楽配信プラットフォームに不正にアップロードされ、収益を得る行為が問題視されていました。Sunoは今後、音声の電子透かしやフィンガープリント(指紋)技術を活用し、他のプラットフォームでの不正利用を防ぐ方針です。なお、アメリカのIT専門メディアからの取材に対し、同社は既存のシステムを採用するのか、独自のシステムを開発するのかについては明らかにしていません。
また、歌詞データを提供する「Musixmatch(ミュージックスマッチ)」と提携し、著作権侵害を検知するシステムを導入したということです。
シュルマンCEOは、「これらのツールは音楽の視聴体験を損なうことなく、改ざんを防ぐように設計されている」と強調しています。さらに、「楽曲が人によって作られたかどうかの判断を下すものではなく、透明性を高めるツールを提供することで、業界全体の協力を容易にするのが私たちの役割だ」としています。
このほか、音楽配信プラットフォームでの大量配信を防ぐため、ダウンロードに関する新たな制限を設ける計画ですが、詳細については明らかにしていません。さらに、コミュニティガイドラインを改定し、「本物と誤認させるような音声」や「実在の人物の声を無断で使用すること」を明確に禁止し、模倣品の作成を防ぐとしています。
Sunoは今年6月、4億ドル(およそ620億円)の資金調達を行いましたが、現在、多方面で法的な問題に直面しています。アメリカレコード協会(RIAA)の主導のもと、ユニバーサル・ミュージック・グループやソニー・ミュージックグループなどの大手レコード会社から提訴されています。
さらに先月には、ドイツの裁判所が同国の音楽著作権管理団体(GEMA)の主張を認め、Sunoが著作権法に違反しているとの判断を下しました。
また、一部の報道によりますと、Sunoは11月にデータ流出の被害に遭い、AIの学習のために動画共有サイトのYouTube(ユーチューブ)などからデータを収集していたことが明らかになったということです。データ流出の通知サービスによると、この問題ではおよそ5500万人のユーザーが影響を受けたとされています。アメリカ・マサチューセッツ州では現在、「利益を優先して安全対策を怠った」として、同社に対する集団訴訟が起こされています。
