サンフランシスコと東京を拠点とするエンタープライズリソースプランニング(ERP)プラットフォームのテーラーは、シリーズAラウンドで約33億円(2,200万ドル)を調達したと発表しました。出資者には、ANRI、JICベンチャーグロースインベストメンツ(JIC VGI)、ニューエンタープライズアソシエイツ(NEA)、スパイラルキャピタル、Yコンビネーターが含まれています。
ERPシステムは通常、すべての必要な機能を含む単一のインターフェースを持ちますが、これが柔軟性を欠き、カスタマイズの選択肢を制限することがあります。これに対し、「ヘッドレス」ERPシステムは、フロントエンド(ユーザーインターフェース)とバックエンド(ERPの核)を分離しています。テーラーの共同創設者兼CEOである柴田陽氏は、TechCrunchに対し、この構造が独立したフロントエンドの選択や開発を可能にすると述べています。
テーラーのシステム「おまかせ」は、AIエージェントがAPIを通じてERPシステムに安全にアクセスし、顧客履歴の要約やワークフローのトリガーなどのタスクを自動化できるということです。
業界にはSAPやオラクルといった大手企業や、CraterやStitchといった垂直SaaSツールが多く存在しますが、柴田氏は、テーラーの「ヘッドレス」で高いカスタマイズ性を持つオプションが競争優位をもたらすと信じています。
「コーディングがますますコモディティ化し、AIエージェントが運用負荷の約50%をすでに担い、90%に向かっている中で、企業はハードコードされたものではなく、構成可能なシステムを求めています」と柴田氏は述べています。「ERPの未来は、モジュール化され、プログラム可能で、人間と機械がシームレスに協力する世界のために構築されていると信じています。」
テーラーの製品はアメリカと日本で利用可能で、もともとは小売業やeコマースの顧客を対象としていました。これらの業界は、動的なサプライチェーン、市場拡大、不確実な地政学的要因から生じる特定の課題に直面しています。「おまかせ」は、在庫、フルフィルメント、財務、購買、オムニチャネル管理などの業務を自動化します。
しかし、現在、B2Bなど他のセクターからも多くの問い合わせを受けており、eコマースや小売以外の企業にもサービスを拡大しているということです。
「B2Bの業務はB2Cのビジネスよりもはるかに複雑で、在庫の販売だけでなく、将来の注文や高度な注文の管理などが含まれます」と柴田氏は述べています。「製品ラインアップを個別化したい場合、それが業務の複雑さをさらに増すことになります。」
柴田氏は元マッキンゼーのコンサルタントで、連続起業家であり、CTOの高橋美里氏と共に2021年にテーラーを設立しました。同社は2022年には10人だった従業員数を、現在では日本、アメリカ、その他の国々で約50人に増やしています。
長期的な計画について、CEOは「一体型のスイートを提供するのではなく、企業が自らのニーズに合わせて組み立て、適応できるモジュラーでAPIファーストのプラットフォームを提供しています。Shopifyが事前構築されたストアフロントとヘッドレスコマースの両方をサポートしているように、当社の製品をフルスタックERPとしてそのまま使用する顧客もいれば、バックエンドとして使用し、その上にツールやインターフェースを構築する顧客もいます。私たちの目標は、一律のモデルを押し付けることではなく、チームが自分たちのワークフローやツールに合わせてERPをスケールし、カスタマイズする柔軟性を提供することです」と述べています。
この4年目のスタートアップは、調達した資金をアメリカでの事業拡大、製品開発、日本での事業運営の3つの重要な優先事項に振り向ける方針です。
「アメリカでの事業拡大を加速するために、専任の市場進出チームを編成し、中規模および大企業の顧客に対するプレゼンスを深めています。次に、ERPモジュールとAI機能の拡張に特に重点を置いて製品開発に多額の投資を行っています。最後に、日本での事業運営を拡大し、成長を支えるために配達および顧客成功チームを拡充する予定です」と柴田氏はTechCrunchに語っています。