アメリカの音楽業界やITスタートアップ企業の間で、SNS上で大量のアカウントを操作し、意図的にトレンドを作り出すマーケティング手法が広がっていることが明らかになりました。専門家からは、インターネット上の情報が意図的に操作されているという指摘が上がっており、消費者の間でマーケティングのあり方をめぐる議論を呼んでいます。
アメリカの有力誌などの報道によりますと、人気を集めているインディーロックバンド「Geese」をめぐり、その人気がマーケティング会社による意図的な情報操作によって作られたものであったことが明らかになりました。マーケティング会社「Chaotic Good」は、数千規模のSNSアカウントを作成し、顧客であるアーティストやクリエイターのために意図的にトレンドを作り出しているということです。
同社の共同創業者は、音楽雑誌のインタビューに対し、「アーティストが自身の音楽を宣伝するため、多数のアカウントから大量の投稿を行い、楽曲がトレンド入りしているように見せかける手法をとっている」と説明しています。同社では大量のスマートフォンを用意し、SNSアカウントを運用して拡散現象を意図的に作り出しているということです。また、投稿だけでなく、コメント欄にも意図的な書き込みを行い、世論の形成を誘導する方針をとっているとしています。同社の幹部は「インターネット上の情報の多くは操作されたものだ」と述べています。
こうした手法は音楽業界にとどまらず、新興企業の間でも採用されています。ファッション関連のアプリ「Phia」の開発者らは、大学生などに報酬を支払い、個人のアカウントでアプリに関する動画を大量に投稿させる手法を導入していることを明らかにしました。複数のクリエイターを通じて1日に数百本の動画を投稿することで、利用者の目に触れる機会を意図的に増やしているということです。
さらに、動画配信者などの間でも、ファンや若者に報酬を支払い、自身の動画の切り抜きを大量に投稿させる手法が一般化しているということです。
一方で、最初から企業によって作られた存在であることを公言するケースもあります。多国籍ガールズグループ「Katseye」は、レコード会社によって育成される過程をドキュメンタリー番組として配信し、意図的にファンの支持を集める戦略をとっています。
インターネット上のコンテンツの多くが自動生成されたものだとする「デッド・インターネット・セオリー(インターネット死滅説)」が指摘される中、どこまでが正当なマーケティングであり、どこからが不適切な情報操作にあたるのか、明確な社会的規範は確立されていません。消費者やファンの間で、その境界線をどのように引くべきか、今後の課題となっています。
