アメリカのIT大手アップルは、腕時計型端末「Apple Watch」の新たなモデルに、AI=人工知能を活用して周囲の音声を認識し、文字起こしや要約を行う新機能を搭載すると発表しました。
アップルが発表した新機能は、「オーディオ・インテリジェンス」、「ライブ・リワインド」、および「Siriリキャップ」の3つです。アップルとしては、AIを活用した音声認識技術を日常的なツールとして普及させる狙いがある一方、オープンAIなどの競合他社に対抗するため、この分野での技術展開を急いだものとみられます。
「オーディオ・インテリジェンス」は、サイレンや火災報知器、赤ちゃんの泣き声などの特定の音を端末上のAIが検知し、利用者に通知する機能です。この機能は、聴覚に障害のある人にとって有用であり、人命に関わる緊急時にも役立つと期待されています。
一方で、他の2つの機能については、プライバシーの観点から議論を呼ぶ可能性が指摘されています。
「ライブ・リワインド」は、端末のボタンを2回押すことで、直前の15秒間の音声をさかのぼって文字起こしする機能です。記録されたテキストは専用のアプリに保存されます。アップルは、同僚のアイデアや聞き逃した内容を記録するのに役立つとしていますが、相手の同意なしに発言が記録される懸念が生じるということです。
また、「Siriリキャップ」は、周囲の音声を認識して会話の要点を自動でまとめ、タイトルや要約を作成する機能です。会議や面談の記録に活用できるとしています。
こうした「常に音声を認識する技術」の普及は、倫理的および法的な課題を伴います。音声データが保存されないため、テキストデータが法的な証拠として扱われる際の基準が不透明であるほか、常に記録される可能性があるという意識が、人々のコミュニケーションや自己表現に萎縮効果をもたらす懸念も指摘されています。
これに対しアップルは、利用者のプライバシー保護に万全を期していると強調しています。新機能は常に作動するわけではなく、利用者が任意のタイミングでオンとオフを切り替えることができるということです。
さらに、音声データそのものは保存されず、アップル側も生の音声データにはアクセスできない仕組みになっているとしています。生成されたテキストデータは、高度な暗号化技術によって保護される方針です。
アップルが利便性とプライバシー保護のバランスをどのように保ち、消費者の理解を得ていくのか、今後の動向が注目されます。
