アメリカのIT大手アップルは、ティム・クック最高経営責任者(CEO)が退任し、9月1日付でジョン・ターナス氏が新たなCEOに就任すると発表しました。クック氏は今後、取締役会会長として同社のグローバル戦略に引き続き関与する方針です。
クック氏はCEOの職を退くものの、完全に引退するわけではなく、引き続きアップルの対外的な代表として活発に活動していくということです。クック氏自身も、アップルに関わらない生活は考えられないとしており、同社への深い関与を続ける姿勢を示しています。
今回のトップ交代に伴い、前任のスティーブ・ジョブズ氏からクック氏へと経営のバトンが引き継がれた2011年当時の状況に改めて注目が集まっています。当時の交代は、ジョブズ氏の体調悪化という非常に困難な状況下で行われました。
クック氏は、ジョブズ氏からの強い推薦を受けてCEOに就任しましたが、恩師であり友人でもあるジョブズ氏を失うという大きな悲しみの中で経営の舵取りを迫られました。現在、クック氏の経営手腕は企業価値や株価の面で高く評価されています。就任当時に3500億ドル(約54兆2500億円)だったアップルの時価総額を、およそ15年間で4兆ドル(約620兆円)規模にまで成長させた実績があります。
2011年8月にジョブズ氏が取締役会などに宛てた辞任の書簡では、「CEOとしての職務を果たせなくなる日が来たら最初に知らせると言ってきたが、残念ながらその日が来た」と記され、後任としてクック氏を強く推薦する旨が綴られていました。クック氏がCEOに就任してわずか42日後、ジョブズ氏は亡くなりました。
当時、クック氏は全従業員に向けたメッセージで「アップルは先見の明がある創造的な天才を失った」と深い哀悼の意を表し、ジョブズ氏の遺志を継いでいく決意を示しました。その後、同社は新本社「アップルパーク」への移転などを経て、創業者の精神を受け継ぎながら事業を拡大してきました。
新たにCEOに就任するターナス氏が引き継ぐ現在のアップルは、クック氏が引き継いだ当時とは事業規模も市場環境も大きく異なります。圧倒的な成長を遂げた巨大企業を率いるという新たな重圧が予想されますが、前任のトップから強い信頼と推薦を受けて就任するという点においては、かつてのクック氏の境遇と共通しているということです。
