AppleがiOS 14.5で導入した「アプリに追跡しないよう依頼」機能について、2025年の現状を分析しました。この機能は、ユーザーがアプリ内データの第三者への共有を管理できるようにするもので、2021年の導入当初から注目を集めていました。
この機能の仕組みとして、Appleは開発者に対し、データ共有の前にユーザーの許可を得るよう求めています。アプリをダウンロードすると、「[アプリ名]に他社のアプリやウェブサイトでの活動を追跡させますか?」というポップアップが表示され、「許可」または「追跡しないよう依頼」の選択肢が提示されます。
「許可」を選ぶと、アプリは年齢、性別、位置情報、使用パターン、購入履歴、閲覧履歴、クリックした広告などのデータを収集できます。一方、「追跡しないよう依頼」を選ぶと、アプリはIDFA(AppleによってiOSデバイスに割り当てられた一意のコード)へのアクセスがブロックされます。このため、広告主は異なるアプリ間での行動データを結びつけることができなくなります。
ただし、開発者はIPアドレスや電話番号、メールアドレスを利用して追跡を続ける可能性があるため、Appleは「依頼」という表現を用いています。開発者が他の手段で追跡しているかどうかをAppleが確認することはできないということです。
この機能の効果については、追跡率が大幅に低下したということです。導入前は米国ユーザーの約73%が追跡可能でしたが、現在は約18%に減少しています。Metaなどの企業は、この機能によって2022年だけで約12.8億ドル(約1980億円)の損失を被ったとされています。
しかし、広告主は新たな手法を模索し、デバイスフィンガープリンティングが一般的になりました。これは、画面サイズやOSバージョン、タイムゾーンなどの情報を収集する方法です。また、アプリ内での行動を追跡するコンテクスチュアル広告に移行しています。
総じて、IDFAの取得よりも望ましくない方法ですが、それでも広告ネットワークにとっては価値のあるデータです。「アプリに追跡しないよう依頼」機能は、クロスアプリ追跡を半減させることに成功しましたが、追跡を完全に排除するものではありません。広告主にとって追跡が困難で高コストになったことが、Appleの狙いであると考えられます。
