アルファベット社のX部門は、ムーンショットプロジェクトを独立した企業として市場に展開する方針を発表しました。X部門の責任者であるアストロ・テラー氏が、テッククランチ・ディスラプト2025で明らかにしました。
この戦略は、X部門のスピンアウトにのみ投資する専用のベンチャーファンドに基づいています。このファンドは「シリーズXキャピタル」と呼ばれ、5億ドル(約775億円)以上を調達しています。アルファベット社はこのファンドに少数出資者として参加しています。
シリーズXキャピタルは、X部門からスピンアウトされた企業にのみ投資する法的義務を負っています。これに対し、アルファベットの他の投資部門であるGVやCapitalG、Gradient Venturesは、幅広いスタートアップやAI企業に投資しています。
X部門は、過去にWaymoやWingといったプロジェクトを独立したアルファベットの子会社として成功させてきました。しかし、テラー氏は、アルファベットのリソースを必要としないプロジェクトもあると述べ、スピンアウトの方針が適しているとしています。
X部門のムーンショットプロジェクトは、世界的な問題を解決するための革新的な技術を提案することを目指しています。テラー氏によれば、合理的に聞こえる提案はムーンショットではないと考えられているということです。
X部門はプロジェクトを厳しくテストし、進展が見込めない場合は中止することを重視しています。このアプローチにより、X部門のプロジェクト成功率は2%と低いものの、実験的な試みを続けることができています。
2025年には、無線光通信技術を開発するタアラと、機械学習を用いた農作物育種を加速させるバイオテクノロジー企業「ヘリタブルアグリカルチャー」がスピンアウトされました。過去には、再生可能エネルギー貯蔵の「マルタ」、地熱暖房の「ダンデライオン」、AI搭載イヤホンの「iyO」などが外部資金を調達しています。
ディスラプトの前夜、X部門は新しいムーンショット企業「アノリ」を発表しました。これは、不動産開発や建設業界の複雑さを解消する新しいAIプラットフォームです。このプロジェクトは、世界の固形廃棄物の約25%と二酸化炭素排出量の約25%を占める建築環境の課題を解決することを目指しています。
