アメリカの起業家ジャック・ドーシー氏が支援するオフライン通信アプリ「Bitchat」について、インド政府がプログラムの共有プラットフォーム「GitHub」に対し、関連するデータの公開を停止するよう要請したとみられることが分かりました。特定の違法コンテンツではなく、ソフトウェアの仕組みそのものを理由とした要請に対し、法的な根拠を巡る議論が広がっています。
この問題は、ドーシー氏がSNSの「X」に、インド内務省からGitHubに宛てたとされる通知書を投稿したことで明らかになりました。通知では、3時間以内にBitchatの3つのデータ群(リポジトリ)へのアクセスを制限するよう求めているということです。
通知書の中では、アプリの匿名性や分散型のシステムが違法行為を助長するおそれがあると指摘しています。また、インターネットが遮断された状況でもユーザー間の通信が可能になるため、当局による合法的な通信傍受や追跡が困難になるとしています。
インド政府は現在、試験問題の漏洩疑惑に対する学生主導の抗議デモを受け、インターネットの通信規制を強化する方針をとっています。現地メディアによりますと、デモの参加者らはインターネットの通信サービスが停止された後、Bitchatなどのオフラインで利用できる通信アプリをダウンロードして連絡を取り合っているということです。
調査会社によりますと、インド国内ではBitchatの利用が急増しています。7月17日から23日までの世界のダウンロード数のうち、およそ85%をインドが占めました。また、1日あたりのアクティブユーザー数も33万人を超え、同国における過去最高を記録したということです。
今回のインド政府の対応について、デジタル権利の保護を訴える専門家からは疑問の声が上がっています。インドの権利擁護団体によりますと、これまでの政府によるコンテンツ削除要請とは異なり、特定の違法な投稿ではなく、ソフトウェアの仕組み自体を理由にプロジェクト全体の削除を求める明確な法的権限はないと指摘しています。
また、別の団体は「データを削除しても、すでにスマートフォンにダウンロードされたアプリが消えるわけではなく、サーバーなしで機能し続けるため、要請の実効性はない」としています。
GitHubは、インド政府からの通知を受け取ったかどうかについて確認を避けています。同社は「政府から完全な削除要請を受けた場合は、アカウント所有者に通知して異議申し立ての機会を与え、対応した要請はすべて公開する方針です」とコメントしています。
なお、インド内務省はこの問題についてコメントを出していません。
