インドのITサービス大手「インフォシス」の元最高経営責任者(CEO)であるヴィシャル・シッカ氏が、人工知能(AI)を活用して企業のソフトウェア開発や運用を支援する新たなスタートアップ企業「Hang Ten Systems」を設立し、3200万ドル(約49億6000万円)の資金を調達したと発表しました。
同社は、ベンチャーキャピタルのメイフィールドが主導するシードラウンドで資金を調達したということです。このラウンドには、サウジアラビアの国営石油会社アラムコ系のベンチャーキャピタルからの戦略的投資のほか、アメリカのIT大手ヤフーの共同創業者であるジェリー・ヤン氏などの投資家も参加しています。
Hang Ten Systemsは、AIによる自動化技術を用いて、企業のソフトウェアの構築や改修、運用を継続的に支援するサービスを提供します。これまでITサービス企業は、企業のソフトウェアのカスタマイズや保守などを請け負うことで大きな収益を上げてきましたが、シッカ氏はこれらの作業の多くをAIが代替できると見込んでいます。
同社はすでに、再生可能エネルギー大手のシーメンス・ガメサ・リニューアブル・エナジーや、医療機器大手のフレゼニウスなどを顧客として獲得しているということです。今後はアメリカのサンフランシスコ・ベイエリアを拠点とし、世界的な企業の需要に応えるため、エンジニアや営業などの人材採用を進め、グローバルに拠点を拡大する方針です。
シッカ氏は、ドイツのソフトウェア大手SAPで12年間にわたり企業向けシステムの開発に携わり、その後インフォシスのCEOやアメリカのオラクルで取締役を務めた経歴を持ちます。2017年にインフォシスを退社した後は、AI関連のスタートアップ「VianAI」を設立し、5000万ドル(約77億5000万円)のシード資金を獲得したほか、2021年にはソフトバンク・ビジョン・ファンド2が主導するラウンドで1億4000万ドル(約217億円)を調達しています。
VianAIが企業の意思決定を支援するAI分析ツールに特化していたのに対し、今回のHang Ten Systemsは、AIによるコード生成や専門知識を活用した「エンタープライズAIサービス」に焦点を当てているということです。出資を主導したメイフィールドは、「従来のITサービスは人員の増加に比例して事業が拡大するが、Hang TenのAIネイティブな事業モデルは、プロジェクトを重ねるごとに効率が高まる構造になっている」として、その成長性に期待を示しています。
現在、金融市場では、AIがITサービス業界の収益構造にどのような影響を与えるかについて議論が交わされています。一部の金融アナリストが「ITサービスはAIによる破壊的な影響を最も受けやすい分野の一つである」と指摘する一方で、インフォシスのナンダン・ニレカニ会長は「AIは業界の市場規模を拡大させる可能性がある」との見方を示しています。
インフォシス自身も、AIを脅威ではなく新たな事業機会と位置づけており、2030年までに「AIを優先したサービス」の市場規模が3000億ドルから4000億ドル(約46兆5000億円から62兆円)に達するとの見通しを示しています。一方で、従来のITサービス企業に対する市場の評価は厳しさを増しており、インフォシスの株価は今年に入って35%以上下落しているということです。
