アメリカの量子コンピューター開発のスタートアップ企業「オラトミック」は、実用的な量子コンピューターの開発に向けて、3億ドル(約465億円)の資金調達を行ったと発表しました。同社は、従来よりも大幅に少ない量子ビットで機能するシステムの構築を目指すとしています。
現在、複数の企業がさまざまな技術的アプローチを用いて、既存のシステムを大幅に上回る性能を持つ初の実用的な量子コンピューターの開発を競っています。
今年、この開発競争に参入したオラトミックは、2030年までに実用規模の量子コンピューターを開発する目標を掲げており、今週、シリーズAラウンドで3億ドル(約465億円)を調達したということです。この大規模な資金調達は、アーチ・ベンチャー・パートナーズやスパーク・キャピタル、コースラ・ベンチャーズが主導し、ベゾス・エクスペディションズやベイン・キャピタルなども参加しました。
オラトミックは、カリフォルニア工科大学の物理学者らによって設立されました。同社の技術は、レーザーを「光ピンセット」として使用し、個々の原子を固定して量子コンピューターの基盤とするものです。
量子コンピューターはノイズに弱いため、効果的なエラー訂正が実用化への鍵とされています。同社の研究者らは、従来考えられていたよりも大幅に少ない「量子ビット」(量子計算の基本単位)でエラー訂正が可能になる手法を発見し、これを機に企業の設立に至ったということです。
共同創業者でCEOのドレブ・ブルブスタイン氏は、「以前であれば、実用化ははるか先だと考えていたため、起業することはなかったでしょう。しかし、今回のブレイクスルーによって私たちの考えは一変しました」と述べています。
現在、多くの量子コンピューター企業が研究者や企業向けに「NISQ(ノイズあり中規模量子コンピューター)」と呼ばれる試作機を提供しています。しかし、オラトミックはこうした過渡的なシステムの開発や販売は行わず、直接、実用的なシステムの構築を目指す方針です。
ブルブスタインCEOは、同じくNISQの段階を飛ばして来年末までに100万量子ビットの実用機の提供を目指し、評価額が70億ドル(約1兆850億円)とされるスタートアップ企業「サイクアンタム」と比較し、自社のアプローチは根本的にシンプルで低コストであると主張しています。同氏は、「有用なコンピューターを構築するために必要な量子ビットは1万から2万程度であり、すでに小規模ながら必要な中核技術のすべてを実験で実証しています」としています。
本格的な量子コンピューターが実現すれば、バイオテクノロジーや化学、物流から、人工知能(AI)や暗号技術に至るまで、複雑な計算を必要とするあらゆる分野で技術革新を促進する可能性があります。
近年、こうした量子コンピューターの開発や関連ソフトウェアの構築に取り組む企業に対し、投資家からの関心が高まっています。今年に入り、複数の関連企業が株式公開を果たしたほか、既存の上場企業の株価も過去1年半で急騰しているということです。
今回の出資を主導した投資家のビノッド・コースラ氏は、オラトミックが初となるエラー耐性を備えた量子コンピューターを構築すると確信しており、自身のSNS上で「自社にとってこれまでで最大の初期投資だ」と明らかにしています。
