アメリカの同性愛者向けマッチングアプリ大手「Grindr(グラインダー)」は、単なる出会いの場にとどまらず、ヘルスケアや旅行などのサービスを統合した総合的なアプリへの転換を目指す方針を発表したということです。
ジョージ・アリソン最高経営責任者(CEO)が2022年に就任して以降、同社は特別買収目的会社(SPAC)を通じた上場や、原則的なオフィス出社の再開などを経て、事業の成長を遂げています。収益は2022年の1億9500万ドル(約302億円)から、今年は5億4000万ドル(約837億円)以上に達する見込みだとしています。
この成長は、主に既存利用者の利用単価の上昇によるものだということです。同社は今後の成長戦略として、マッチング機能に加えて、ヘルスケアや旅行支援などを提供するプラットフォームへの進化を掲げています。さらに、今年後半から来年初めにかけて、人工知能(AI)を活用した新たな定額制プラン「EDGE」を導入する方針です。このプランについては、カナダでの試験運用において月額350ドルから375ドル(約5万4000円から5万8000円)相当に設定されたことが議論を呼びましたが、同社は価格の弾力性を測るための試験的なものだったと説明しています。なお、既存のプランは月額23.99ドル(約3700円)および44.99ドル(約7000円)で提供されているということです。
また、同社はAIを活用した効率的な組織運営を進めているとしています。技術部門の従業員数は約100人にとどまるものの、プログラムコードの約80パーセントをAIが作成することで、従来の約350人規模に相当する業務をこなしているということです。これにより、過去1年間で技術部門の生産性が2.5倍に向上したとしています。AIは、利用者の行動履歴に基づいた精度の高いマッチングにも活用される方針です。
ヘルスケア分野の展開については、すでにアプリ内でED(勃起不全)治療薬などの提供を始めているほか、AIを活用した自動応答システムによる手続きの簡略化を進めているということです。また、HIV予防薬に関する情報提供にも注力しており、将来的には遠隔医療を通じて専門の医師と利用者を結びつけるサービスの構築も視野に入れている方針です。
一方、株式市場における同社の評価をめぐっては、同性愛者向けアプリであることに対する社会的な偏見から、企業価値が不当に低く見積もられているとの指摘が出ています。アリソンCEOは、一部の金融機関が取引を敬遠した事例があったことを明らかにする一方で、複数の大手金融機関が同社の目標株価を引き上げていることにも触れ、市場からの評価は着実に改善しているとの見方を示しています。
