テクノロジー業界のリバタリアニズム(自由至上主義)を批判したポーリナ・ボルスック氏の著書「サイバーセルフィッシュ」が、初版から24年を経て復刊しました。同書は2000年に出版され、長らく絶版となっていましたが、昨年から再評価の動きが広がり、Tin House社から新しい版が発売されます。ボルスック氏はインタビューで、シリコンバレーの「テクノ・リバタリアン」の影響力を分析し、AIの台頭や業界の変化について語りました。
ポイント
- 「サイバーセルフィッシュ」は2000年初版、長年絶版だったがTin House社から復刊
- 著者ボルスック氏はシリコンバレーのテクノ・リバタリアニズムを「12歳の世界観」と批判
- 復刊のきっかけは中古価格の高騰やSNSでの再評価、ヨーロッパの学者からの問い合わせ
- 新版にはギル・デュラン氏による序文と著者自身の新たな前書きを収録
- ボルスック氏は現在のAIブームを「大きなポンジスキーム」と表現
復刊の経緯
ボルスック氏は、ここ1年半ほどで中古書の価格が徐々に上昇していることに気づきました。以前は送料の方が高いほどの安値で取引されていたといいます。さらに、ヨーロッパの学者から連絡が来たり、SNSで「この本は重要だ」という投稿が突然現れたりするようになりました。
こうした動きの中で、ボルスック氏は「ナード・ライヒ」の著者ギル・デュラン氏と知り合い、意気投合。デュラン氏がポッドキャストで同書を絶賛したことをきっかけに、入手困難な状況が生まれ、Tin House社からの復刊につながりました。新版にはデュラン氏の序文と、ボルスック氏自身による「どうやってこの本が蘇ったか」を綴った前書きが加えられています。
テクノ・リバタリアニズムとは
ボルスック氏は、テクノ・リバタリアニズムを「規制に激しく反対する信念の束」と定義します。彼女によれば、テック業界の人々は政府から最も恩恵を受けながら、最も苦しみを受けていないにもかかわらず、政府を敵視しているといいます。
同氏は、この思想が1990年代のネットスケープIPO以降に強まり、金融業界の論理がシリコンバレーに流入したと指摘します。そして、ドットコムバブル崩壊後もこの態度は「地下水を汚染するように」広がり続けたと述べています。
AIブームへの批判
ボルスック氏は、現在のAIブームを「大きなポンジスキーム(詐欺的投資スキーム)」と表現します。AI企業は株主価値理論を盾に、本質的な価値ではなく株価対策として事業を進めていると批判します。
また、Appleの広告が「創造性を破壊する」として炎上した事例を挙げ、かつて「クリエイティブ・クラス」に愛されたAppleが、今も自らを「解放的」と見なしていることに違和感を示しました。
若い世代へのメッセージ
ボルスック氏は、テック業界で働きたいと考える若者から「どうすればいいか」と尋ねられることが増えたといいます。しかし、AIが投資資金を吸い上げ、政府や非営利セクターも財政的に厳しい現状では、明確な答えを出せずにいます。
それでも、かつてのように小さな会社を立ち上げ、身の丈に合った成長を目指す道は残されているかもしれないとし、人々の「絶望と創意工夫」を過小評価すべきではないと語っています。大手企業内からの改革については懐疑的で、「彼らは十分に非道徳的だから、利益にならなければMAGA(トランプ支持派)との連携をやめるだろう」と皮肉りました。
「サイバーセルフィッシュ」新版は、Tin House社から発売されます。
