アメリカの宇宙開発スタートアップ企業「ストーク・スペース」は、AI(人工知能)開発を手がける「オープンAI」の元幹部であるケビン・ワイル氏が取締役に就任したと発表しました。同社は完全再利用可能なロケットの開発を進めており、経営体制の強化を図るねらいがあるということです。
ケビン・ワイル氏は、これまでに「X(旧ツイッター)」や「メタ」、さらにオープンAIなどで要職を務めたIT業界のベテランとして知られています。ストーク・スペースのアンディ・ラプサCEO(最高経営責任者)によりますと、2020年の創業直後からワイル氏の支援を受け、資金調達や企業基盤の構築について助言を得てきたということです。
ストーク・スペースはこれまでに総額13億4000万ドル(約2077億円)の資金を調達しており、2025年のシリーズDと呼ばれる資金調達ラウンドでは5億1000万ドル(約791億円)を集めています。同社は今年中にも、短期間で再利用可能なロケットの打ち上げを目指しており、事業規模の拡大に向けてワイル氏を取締役に迎えることになったとしています。
ワイル氏は、2024年6月から2025年10月までオープンAIの最高製品責任者(CPO)を務め、最近では科学研究を加速させる部門のトップを担っていました。一部では、オープンAIのサム・アルトマンCEOがストーク・スペースへの投資を検討していたとも報じられています。これについてラプサCEOは「うわさについてはコメントしない」としたうえで、ワイル氏の役割はストーク・スペースの事業そのものに注力することだと説明しています。
ストーク・スペースが開発を進めるロケット「ノバ」は、完全に再利用可能で、繰り返し打ち上げることができるよう設計されています。大気圏再突入時の極端な高熱に耐える技術的な課題から、これまで完全な再利用を実現した企業はなく、イーロン・マスク氏が率いる「スペースX」の大型ロケット「スターシップ」が最も近い段階にあるとされています。
現在、宇宙空間にデータセンターを構築し、太陽光発電を活用する構想が投資家の間で注目を集めています。この実現には、半導体を軌道上に運ぶコストの大幅な削減が不可欠であり、ラプサCEOは「完全かつ迅速な再利用があってこそ意味がある」と述べ、同社のロケットが重要な役割を果たすとの見方を示しました。
さらに、今後の事業展開においてはアメリカ軍との契約も重要な鍵を握るとみられています。ワイル氏は、IT業界と国防総省の連携強化を目的にアメリカ陸軍予備役に参加した経験を持つほか、地球観測衛星企業「プラネット・ラブズ」の社長として同社を株式上場に導いた実績もあります。
ラプサCEOは「リスクの大部分は乗り越えたが、まだ課題は残っている。準備が整い次第、打ち上げを実施する」と述べ、実用化に向けた開発を加速させる方針です。
