暗号資産(仮想通貨)の取引所で世界最大手の「バイナンス」は、AI(人工知能)が市場を分析し、利用者に代わって自動で取引を行うプラットフォームの提供を開始したと発表しました。
「Agent OS」と呼ばれるこのプラットフォームは、開発者がAIアプリケーションをバイナンスの金融システムに接続できるようにするものです。利用者は、「ChatGPT」などのAIツールを通じて、市場データの取得や口座情報の確認、実際の取引などをAIに委ねることができるということです。
一方で、AIが自律的に行動するようになる中、バイナンスはリスク管理の責任を主に利用者に委ねる方針です。利用者は、AIがアクセスできる範囲や取引の権限を自ら設定する必要があります。
バイナンスのプロダクト担当副社長であるジェフ・リー氏は、「AIに完全な自由を与えるのではなく、利用者が口座ごとに細かく権限を管理できるようにすることで、資産を保護する仕組みにしている」としています。
具体的には、AI専用の「サブ口座」を設け、現物取引や先物取引などの用途を限定できるということです。このサブ口座からの資金の引き出しは初期設定で制限されており、AIの活動範囲を安全な環境内に留めるとしています。
また、AIが注文を出すたびに利用者の承認を求めるか、完全に自動で取引させるかを選択できます。バイナンス側はAIの取引額や損失額に独自の上限を設けておらず、利用者がサブ口座に入金した金額が事実上の上限となります。
AIが特定の取引を決定した理由について、リー氏は「当社のシステム外で処理されるため、行動の根拠を把握することはできない」と述べています。このため、バイナンスは取引の結果を監視することはできるものの、AIが誤った情報や外部からの操作によって判断を下したかどうかを確認するのは難しいということです。
さらに、このプラットフォームは決済やブロックチェーン上の取引にも対応しています。ただし、取引所での売買とは異なり、ウォレット(電子財布)を通じた取引にはバイナンスが設定した1日あたりの上限額が適用されます。通常の暗号資産の交換は5万ドル(約775万円)、分散型金融(DeFi)の取引は10万ドル(約1550万円)、決済は20ドル(約3100円)に制限されるということです。
リー氏は、今回の取り組みについて「暗号資産や伝統的な金融市場で機能するAIアプリを構築するための第一歩だ」としています。
AIを取引システムに組み込む動きは他の取引所でも進んでおり、「クラーケン」や「コインベース」、「OKX」などの競合他社も、同様のツールを相次いで導入しています。
