アメリカのスタートアップ企業で、AI(人工知能)の性能評価を手がける「パトロナスAI(Patronus AI)」は、新たに5000万ドル(約77億5000万円)の資金調達を実施したと発表しました。自律的に複雑なタスクを処理する「AIエージェント」の信頼性を検証するため、仮想のデジタル環境を構築する事業を強化する方針です。
AI技術は現在、単なる質問応答から、旅行の予約や財務分析などの複雑な作業を自律的に実行する「AIエージェント」へと進化しています。しかし、実際の業務を任せるためには、多様な状況下で正確に動作するかを確認する必要があります。従来の評価指標(ベンチマーク)で高得点を獲得しても、現実の複雑な業務を正しく遂行できる証明にはならないという課題がありました。
パトロナスAIは、アメリカのIT大手メタの元研究者らが2023年に設立した企業です。同社は「デジタルワールドモデル」と呼ばれる技術を用い、ウェブサイトや社内システムの複製(レプリカ)を構築しています。この仮想環境内で、強化学習を用いてAIエージェントにストレステストを行い、タスクの成功には報酬を、失敗にはペナルティを与えることで性能を評価するということです。
同社のサービスは、最先端のAI開発企業や多くの新興企業に採用されており、過去1年間で収益が15倍に急成長したとしています。今回の資金調達はシリーズBラウンドと呼ばれる投資段階にあたり、総額は5000万ドル(約77億5000万円)に上ります。これにより、同社の累計資金調達額は7000万ドル(約108億5000万円)に達したということです。
この評価手法は、自動運転車の開発企業が、悪天候や子どもの飛び出しなどのまれな危険状況を想定した仮想空間で車両をテストするアプローチに似ているとされています。AIエージェントは手順を省略してタスクを失敗する傾向があるため、同社のシステムがこうした欠陥を特定し、モデルの信頼性を担保する役割を果たしています。
同社は現在、ソフトウェア開発や金融分野向けに仮想環境を提供していますが、今後はさらに適用範囲を広げる方針です。共同創業者のアナンド・カナッパン氏は、「現在は結果をすぐに検証できる課題に注力していますが、今後は検証が難しい分野にも対応していく」と述べています。さらに、数時間から数週間にわたって稼働し続けるAIエージェントを評価できる環境の構築を目指すとしています。
競合については、AI開発企業が社内に設けている独自の評価チームを主な競争相手と位置づけています。また、人間のデータを用いてモデルを調整する他の企業とは異なり、同社は人間の介入なしにAIエージェントの挙動を自動で評価する点に独自性があるとしています。
