音声AIを活用して市場調査を行うアメリカのスタートアップ企業「Listen Labs」は、15億ドル(およそ2325億円)の企業評価額に基づく資金調達を中止したと発表しました。背景には、IT大手「セールスフォース(Salesforce)」との買収交渉が進んでいることがあるとみられています。
関係者によりますと、Listen Labsはベンチャーキャピタルの「メンロー・ベンチャーズ(Menlo Ventures)」が主導する資金調達ラウンドで、1億2500万ドル(およそ194億円)を調達する基本合意書に署名していました。しかし、最終的にこの資金調達は完了せず、合意は破棄されたということです。ベンチャー業界において、署名済みの合意書を破棄することは異例だとされています。
この背景には、顧客管理システム大手のセールスフォースによる買収交渉があるとみられています。一部の報道によりますと、セールスフォースは20億ドル(およそ3100億円)でListen Labsを買収する協議を行っています。ただし、交渉は最終的な段階には至っておらず、合意に達しない可能性もあるとしています。
Listen Labsは、AIを活用して顧客調査を自動化する分野で急成長している企業の1つです。設立から3年で、年間の収益は3000万ドル(およそ47億円)に達しているということです。
一方、人間の行動を予測するAIを開発する競合企業の「Simile」は、今年7月に企業評価額20億ドル(およそ3100億円)で、2億ドル(およそ310億円)の資金調達を行ったと発表しました。この動きが、Listen Labsの新たな企業評価額の基準になった可能性があると指摘されています。
専門家は、セールスフォースとの買収交渉が決裂した場合、Listen Labsは企業評価額20億ドル(およそ3100億円)以上を目標に、再び資金調達に動く方針だとみています。
セールスフォースにとって、Listen Labsの買収は顧客のニーズを予測するAI機能の強化につながる狙いがあります。しかし、収益の67倍に上る買収額は高すぎるとして、最終的に見送られる可能性もあるということです。
各社はこの件について、現時点でコメントを出していません。
Listen Labsは、2023年に設立されました。同社のAIは、アンケートの質問を作成し、音声や動画を通じて顧客にインタビューを行います。その結果を自動で分析し、人間の調査員が作成するような報告書やプレゼンテーション資料にまとめる技術を持っています。
大企業はブランドや製品に対する顧客のニーズを把握するために市場調査を行いますが、従来の手法では多額の費用と数週間の時間がかかっていました。Listen Labsの技術を活用することで、企業は調査にかかる時間と費用を大幅に削減し、製品の改善をより効率的に進めることができるとしています。
現在、同社のサービスはマイクロソフト(Microsoft)やキャンバ(Canva)などの大手企業に導入されています。また、市場調査の分野では、Listen LabsやSimileのほかにも、AIを活用して人間の行動をシミュレーションする企業が次々と登場しています。
Listen Labsは今年1月、企業評価額5億ドル(およそ775億円)で、6900万ドル(およそ107億円)の資金調達を行っていました。
