アメリカの人事ソフトウェア提供大手「リップリング(Rippling)」は今週、企業が従業員のAI(人工知能)利用にかかるコストを把握し、管理するための新たなツール「AI Spend Console」の提供を開始したと発表しました。このツールは、従業員やチームごとのAI利用額と、実際の生産性向上との費用対効果(ROI)を可視化できるということです。
同社によりますと、このツールは自社内でのAI利用コストが急増した経験をもとに開発されました。今年初め、同社では研究開発(R&D)部門の人件費予算の40%に相当する数百万ドル(数億円規模)が、AIの利用枠(トークン)に費やされていることが判明しました。
当時、AI関連の支出は毎月80%のペースで増加していました。社内調査を実施した結果、全従業員の約10%から15%が全体のAI支出の60%を占めていることが分かりました。中には、1か月に5万ドル(約775万円)を消費しているエンジニアもいたということです。
リップリングは、AIの利用を禁止するのではなく、適切な管理を行う方針を固めました。調査の過程で、従業員が用途にかかわらず、常に最新かつ最も高額なAIモデルを初期設定で使用しているという課題が浮き彫りになりました。同社のマット・マッキニス最高製品責任者(CPO)は、「AI開発企業側には、顧客のコスト削減を支援する動機がなく、支出を管理するための十分なデータも提供されていない」と指摘しています。
こうした課題に対応するため、企業は複数のAIモデルを価格帯に応じて使い分ける必要があるとしています。リップリングは、入力された指示(プロンプト)を、タスクに最も適した費用対効果の高いモデルに自動的に振り分ける独自のシステムを構築しました。
新たなツールを導入した結果、同社ではAI利用にかかるコストを人件費予算の40%から約15%に削減することに成功しました。AIの利用量自体は減らしておらず、適切なモデルへの振り分けを行うことで、大幅なコスト削減を実現したとしています。
リップリングは今後、エンジニア以外の部門でもAIの活用を進める方針です。しかし、顧客対応などの業務においては、AIの利用と生産性向上の関連性を明確に測定できなければ、全従業員へのAI導入は難しいとの見解を示しています。
今回発表された「AI Spend Console」は、同社の人事システムの契約企業に提供されるほか、単独の製品としても購入可能だということです。
