AI(人工知能)の開発競争において、一部の企業が提供する最先端のモデルから、無償で公開されている「オープンソースモデル」へと、業界の主力が移りつつあると指摘されています。開発コストの削減やデータ管理の観点から、企業が独自のモデルを構築する動きが広がっているということです。
今年の夏、AI業界ではアメリカのAI企業が開発した最先端モデルや、アメリカ政府による技術の輸出規制などに注目が集まりました。しかし、その裏で多くの開発者たちは、特定の企業に依存しない公開モデルの活用を進めていたということです。
AI開発のプラットフォーム「ハギングフェイス」では、今年の春、中国企業が公開したモデルのダウンロード数が全体の41%を占め、アメリカのモデルを上回りました。また、別のプラットフォームでも、利用数の上位をテンセントやシャオミなど中国企業のモデルが独占しています。データ分析によりますと、日常的なAIの処理の多くを公開モデルが担い、非公開の最先端モデルは高コストな特殊用途として使い分けられているということです。
こうした状況について、ハギングフェイスのクレム・デラングCEOは、「数年後には、最先端モデルは実験や特に価値の高い作業にのみ使われるようになる可能性がある」と指摘しています。実際の業務の大部分は、企業が独自に開発したモデルやオープンソースモデルによって処理されるようになるという見方を示しています。
企業の間では、他社のシステムに依存するのではなく、自社でAIモデルを保有する利点が強調されています。高額な利用料を支払って外部のAIを利用し続けることへの懸念から、自社の技術としてAIを管理・運用する方針をとる企業が増加しているということです。
このような公開モデルの普及は、中国のAI研究機関による技術力の向上と重なっています。中国企業は数か月ごとに、導入コストが安くカスタマイズしやすい高性能なモデルを公開しています。これにより、アメリカの企業が数十億ドル(数千億円規模)を投じて開発した非公開のAIモデルの優位性が揺るぎつつあるとみられています。
マイクロソフトのサティア・ナデラCEOも、特定のAI提供企業に依存することのリスクに警鐘を鳴らしています。ナデラCEOは、企業が自らのデータを管理し、独自の学習基盤を持つことが不可欠だとしています。
一方で、高性能なモデルを広く公開することについては、安全性の観点から議論が続いています。アメリカのAI企業、アンスロピックのダリオ・アモデイCEOなどは、悪用される危険性を指摘し、公開を制限すべきだと主張しています。
これに対し、ハギングフェイスのデラングCEOは、「AIにおける最大のリスクは権力の集中である」と述べています。技術を一部の企業が独占するのではなく、オープンソース化して透明性を高めることこそが、安全性の向上につながるとしています。
