アメリカの人工知能開発企業「ジェネラル・イントゥイション」は、ビデオゲームのデータを用いて現実世界のAIエージェントを訓練する技術の開発に向け、3億2000万ドル(約496億円)の資金を調達したと発表しました。企業評価額は23億ドル(約3565億円)に達したということです。
同社がこれまでに公表した資金調達の総額は、昨年10月の設立時に調達した1億3400万ドル(約208億円)と合わせ、4億5400万ドル(約704億円)となりました。今回の資金調達は、ベンチャーキャピタルのコースラ・ベンチャーズが主導し、ジェネラル・カタリストや、Amazon創業者のジェフ・ベゾス氏、元GoogleCEOのエリック・シュミット氏のほか、Google DeepMindやマサチューセッツ工科大学の研究者などが参加しました。調達した資金の大部分は、AIモデルの計算能力の拡大や次世代モデルの事前学習に充てられる方針です。
ジェネラル・イントゥイションは、ピム・デ・ウィットCEOが創業したゲーム動画共有プラットフォーム「メダル」から派生して設立されました。同社のAIモデルは、数億時間にも及ぶゲームプレイ動画を初期データとして学習しています。最大の特徴は、単なる映像だけでなく、プレイヤーがいつ、どのボタンを押したかという「アクションデータ」を活用している点です。デ・ウィットCEOは、「映像から行動を推測する従来の手法とは異なり、ゲーム内のデータと現実世界の動態の双方に対応できるモデルを構築している」としています。
この技術は、仮想空間だけでなく現実世界のロボット制御にも応用されています。同社のデモンストレーションでは、AIを搭載した四足歩行ロボットが自律的に周囲を探索する様子が公開されました。このロボットは、わずか8分間の現実世界のデータでAIモデルを微調整しただけで稼働したということです。同社は今後、自社で最終製品を開発するのではなく、他社が技術を活用できる基盤モデルを提供する方針です。今年夏ごろまでにソフトウェアの連携機能であるAPIを広く提供し、自動運転やロボット開発の効率化を支援するとしています。
デ・ウィットCEOは、過去に人道支援活動に携わった経験から、AI技術の軍事利用を厳しく制限する方針を示しています。「人間を傷つけるためにAIエージェントを使用することは許可しない」としており、技術の用途を捜索救助などの平和的な目的に限定するということです。また、AIの普及によって影響を受けるゲーマー向けに、データラベリングやロボットの遠隔操作などの業務で収入を得られるプラットフォームも立ち上げました。デ・ウィットCEO自身も10代の頃にゲーム関連の開発で150万ドル(約2億3000万円)を稼いだ経験があり、次世代の技術開発にゲーマーを巻き込む狙いがあるとしています。
コースラ・ベンチャーズのビノッド・コースラ氏は、「ゲーム内の人間の行動データが、AIに直感的な能力をもたらす鍵になる」と述べ、同社の独自データに高い期待を示しています。ジェネラル・イントゥイションは今後、多様な現実世界のデータを提供する企業と提携し、AIモデルの実用化に向けた研究をさらに進める方針です。
