人工知能(AI)の普及による雇用の減少が懸念されるなか、AIに積極的に投資している企業では、逆に若手を含む従業員数が増加しているとする調査結果を、アメリカの調査会社などが発表しました。AIが単なる労働力の代替ではなく、企業の成長を後押しする手段となっている可能性が示されたということです。
AIに関連した人員削減の発表が相次ぐなか、雇用の先行きに対する懸念が広がっています。一部の報告によりますと、これまでに発表されたAI関連の人員削減は約9万人に上るほか、今後5年間でアメリカの雇用の最大15%がAIによって失われると予測されています。IT業界は「AIが新たな雇用を生み出す」と説明していますが、特に就職を控えた若い世代の不安を払拭するには至っていません。
こうしたなか、企業の支出管理を行う「ランプ」と労働市場の分析を行う「レベリオ・ラブズ」は、およそ2万2000社のAI関連支出と雇用データに基づく共同調査の結果を発表しました。
報告書によりますと、AIに多額の投資を行っている企業では、懸念されていた若手社員を含め、従業員数がより速いペースで増加しているということです。具体的には、導入初期の3か月間に従業員1人当たり月平均30ドル(約4650円)をAIに支出した「積極導入企業」において、従業員数が10.2%増加したとしています。
従業員の増加は、エンジニアリングや営業、管理、カスタマーサービス、財務、マーケティング、研究職など、幅広い職種で見られました。特にソフトウェアやインターネット、メディアなどの情報通信分野で最も高い伸びを示したということです。
一方で、今回のデータはベンチャーキャピタルの支援を受けて急成長している技術志向の企業に偏っているという指摘もあります。このため、AIが直接的に雇用を生み出したのか、あるいは成長企業がAIを導入しているだけなのかを判断するのは難しいとされています。
報告書の著者も、「AIがすべての企業で雇用を生み出すとは限らない」と認めたうえで、「AIが広範な雇用の喪失を招くという主張への反証にはなる」と述べています。
また、アメリカの金融大手ゴールドマン・サックスの最近の調査では、過去1年間でAIによって月に約1万6000人の雇用が失われ、特に若手層が大きな打撃を受けていると指摘されていました。しかし、今回の報告書では、技術志向の企業において若手層の従業員数が12%増加したとされています。
報告書は、AIがソフトウェア開発などの生産コストを引き下げることで、企業全体の拡大につながる可能性があると分析しています。
その一方で、試験的な導入にとどまり、継続的な投資を行わない企業では、従業員数の増加は見られなかったとしています。資金や技術力を持つ企業とそうでない企業との間で、AIの活用による成長の格差が今後さらに広がる可能性があると警告しています。
