世界各国の政府機関などに監視ソフトを提供するスパイウェア開発企業を標的に大規模なサイバー攻撃を行い、現在も逮捕されていないハッカー「フィニアス・フィッシャー」の活動実態について、海外の専門メディアなどが詳細な調査結果を発表しました。このハッカーは、企業から機密情報を盗み出して公開するなど、政治的な動機に基づく「ハクティビスト」として活動しているとみられています。
フィニアス・フィッシャーが最初に公の場に姿を現したのは2014年8月のことです。監視ソフト「FinFisher」を開発する企業にサイバー攻撃を仕掛け、製品マニュアルや価格表などのデータを流出させたと発表しました。さらに翌年には、イタリアのスパイウェア開発企業「Hacking Team」に攻撃を行い、ソースコードや社内メール、顧客リストなど400ギガバイト以上の機密情報を盗み出しました。
Hacking Team社は、政府向けの監視ソフトを世界的なビジネスとして展開した先駆けとなる企業でした。しかし、このサイバー攻撃による情報流出をきっかけに、エクアドルやメキシコなどでの不祥事が次々と発覚しました。その結果、同社の経営は悪化し、数年後には最高経営責任者(CEO)が会社をわずか1ユーロ(約165円)で売却する事態に追い込まれたということです。
その後も、このハッカーは政治的な動機に基づく攻撃を続けました。スペインのカタルーニャ州警察の労働組合に対するサイバー攻撃では、反警察的な思想を掲げるとともに、攻撃の手法を解説する動画を公開しました。また、トルコのエルドアン政権の与党に対する攻撃は、トルコ政府と対立するシリア北東部の左派クルド人勢力への連帯を示す目的があったとしています。
さらに、イギリスとアイルランドの間に位置するマン島にある「ケイマン・ナショナル銀行」の支店も標的となりました。ハッカー本人が活動家に語ったところによりますと、違法な手段で資金を獲得し、余剰資金を寄付する活動を行っていたということです。実際に、シリアのクルド人勢力に対して少なくとも1万ドル(約155万円)相当の暗号資産「ビットコイン」を寄付したとされています。
フィニアス・フィッシャーは2016年に銀行への攻撃を行った後、数年間沈黙を保っていましたが、その後、企業の違法行為を告発したハッカーに報酬を支払うプログラムを発表しました。しかし、これを最後に公の場から姿を消し、SNSのアカウントもすべて削除されています。イタリア当局による捜査でも、身元を特定する証拠は見つからなかったということです。
その正体については、無政府主義を掲げるハクティビストであるという見方のほか、ロシアなどの情報機関が作り出した架空の人物ではないかという指摘も出ています。本人はロシアの工作員であることを否定しており、自らの身元に関する情報には意図的に偽情報を交えていると述べています。長年この問題を取材してきた記者によりますと、ハッカーは現在も生存しており、ここ数年の間にも接触があったということです。
