アメリカのスタートアップ企業「メリノ・エナジー(Merino Energy)」は、設置の複雑さを解消し、導入コストを抑えた新型の家庭用ヒートポンプ「メリノ・モノ(Merino Mono)」を開発したと発表しました。アメリカ西海岸を中心に、環境負荷の低い空調設備の普及を加速させる方針です。
アメリカ西部カリフォルニア州は2022年、2030年までに600万台のヒートポンプを導入する目標を掲げました。しかし、これまでの設置数は約230万台にとどまっており、目標達成には今後5年間、1日平均およそ2000台を設置する必要があります。
調査会社によりますと、一般的な分離型ヒートポンプは設置に約1日を要し、1区画あたりの費用が4000ドルから6000ドル(約62万円から93万円)かかるため、普及の壁になっているということです。
この課題を解決するため、IT大手アップルでワイヤレスイヤホン「AirPods」の開発などに携わったメアリー・アン・ラウ氏らがメリノ・エナジーを設立しました。同社が今回発表した新製品「メリノ・モノ」は、1時間程度の設置作業費を含めて3800ドル(約59万円)で提供されるということです。
ラウ氏は起業のきっかけについて、自身の自宅を電化した際、ヒートポンプの導入費用が非常に高額だったことに衝撃を受けたと述べています。多くの消費者にとって手が届かない現状を変える必要があると判断したということです。
一般的なヒートポンプは室内機と室外機に分かれていますが、新製品はこれらを1つのユニットに統合し、窓の下に設置できるサイズに小型化しています。標準的な120ボルトのコンセントで動作するため、大がかりな電気工事を必要としません。
また、Wi-Fiに接続してスマートフォンなどで操作できるほか、人感センサーや複数台の連携機能を備えています。さらに、指輪型の健康管理端末「オーラリング(Oura Ring)」と連携し、睡眠状態に合わせて室温を自動調整する機能も開発中だとしています。
設置作業は、壁に吸気用と排気用の2つの穴を開けるだけで完了します。室外機を設置したり、冷媒管を溶接したりする作業が不要なため、人件費などのコストを大幅に削減できるということです。
小型化に伴い、エネルギー消費効率は大型の室外機を持つ製品に比べてやや低くなっています。しかし同社は、都市部のアパートやマンションなどの集合住宅においては、すべての設備を室内に収める合理的な設計が適しているとしています。
現在、同社はカリフォルニア州内の低所得者向け集合住宅に48台を設置するプロジェクトを進めています。当面は同州を主要市場としつつ、将来的にはハワイ州やオレゴン州、ワシントン州などへ事業を拡大する方針です。
製品は年内の出荷に向けて予約の受け付けを開始しており、同社は設置にかかる時間と複雑さを軽減することで、ヒートポンプの市場への普及を後押ししたいとしています。
