AI(人工知能)向けのデータセンターの建設が急増する中、電力網に不可欠な変圧器の需要が世界的に高まっています。こうした中、エネルギー関連のスタートアップ企業「Ayr Energy」は、100年以上前から使われている伝統的な技術を活用して変圧器を製造し、すでに5億ドル(約775億円)を超える受注を獲得したと発表しました。
Ayr Energyが製造しているのは、電力網で1世紀以上にわたって使われてきた「鉄心」を用いた変圧器です。変圧器の分野では、新しい技術の開発を目指す新興企業が相次いで登場していますが、同社と投資家は、従来の技術に依然として大きな可能性があると分析しています。
同社のアニルード・レディCEO(最高経営責任者)は、市場の機会が非常に大きいため、ベンチャーキャピタルからの資金調達を通じてリスクを取り、大きな利益を目指す方針を示しています。
変圧器の市場は、これまでGEやシーメンス、三菱などの大手企業が長年シェアを占めてきました。先進国における電力需要は安定しており、予測が容易だったためです。しかし、近年の社会全体の電化の動きに加え、AI開発に伴うデータセンターの需要が急増したことで、状況は一変しました。調査会社によりますと、変圧器の需要は2030年代半ばまでに倍増すると予測されています。
一方で、既存の大手メーカーは過去の需要の変動を経験しているため、新たな製造ラインへの投資には慎重な姿勢を示しているということです。これに対し、Ayr Energyは、現在の需要増は複数の要因によるものであり、一時的なものではなく長期的な成長サイクルになるとみています。
同社は、インドの製造業者と提携し、独自の仕様で変圧器を製造しています。一般的な変圧器よりも部品を規格化する「モジュール化」を進めることで、顧客が発注後に仕様を変更しやすい設計にしているということです。
現在、再生可能エネルギー企業やデータセンターの開発企業などは、機器の納品までの期間が長期化しているため、プロジェクトの詳細が固まる前に発注しなければならない状況にあります。既存の大手メーカーはプロジェクトごとに変圧器を特注で製造するため、仕様の変更が難しいという課題がありました。そのため、途中で計画が変更された場合でも柔軟に対応できる同社の製品が評価されています。
Ayr Energyは、現在の需要急増を機に市場での足場を固め、顧客の信頼を獲得したうえで、将来的には半導体を用いた次世代の変圧器などの新しい技術を展開していく方針です。
