民間投資機関などのデータによりますと、次世代のクリーンエネルギーとして期待される核融合発電の実用化を目指し、1億ドル(約155億円)以上の資金調達を行ったスタートアップ企業が相次いでいることが明らかになりました。AIや半導体技術の進歩を背景に、エネルギーの自立と脱炭素化に向けた企業の開発競争が激しさを増しているということです。
核融合技術は長年、実用化には程遠いとされてきましたが、近年は現実味を帯びた技術として投資家の注目を集めています。太陽のエネルギー源である核融合反応を地球上で制御し、無尽蔵のエネルギーを生み出すことが期待されています。商業的に成立する発電所が完成すれば、巨大なエネルギー市場を根本から変革する可能性があるとされています。
この分野の急成長は、高性能な半導体、高度なAI、そして強力な高温超電導磁石という3つの技術的進歩によって支えられています。これらの技術により、複雑な原子炉の設計や精緻なシミュレーションが可能になったということです。
さらに2022年末には、アメリカ・エネルギー省の研究施設が、投入したレーザーのエネルギーを上回る出力を得る「科学的ブレークイーブン」を達成したと発表しました。商業化にはまだ時間がかかるものの、基礎科学の正当性を証明する重要な一歩となりました。以下は、民間投資家から1億ドル(約155億円)以上の資金調達を実施した主要なスタートアップ企業の一覧です。
■ Commonwealth Fusion Systems(CFS) これまでに累計39億4,000万ドル(約6,107億円)を調達し、民間資金の約3分の1を占めています。マサチューセッツ州を拠点とし、トカマク型の実証炉「Sparc」を建設中です。2027年までに科学的ブレークイーブンを達成する目標を掲げています。また、2020年代後半には商業用発電所の建設を開始し、Googleに電力の半分を供給する契約を結んだとしています。
■ Helion 累計32億ドル(約4,960億円)を調達しました。2028年の発電開始という最も強気な目標を設定しており、最初の顧客はMicrosoftになる予定です。磁場反転配位型と呼ばれる独自設計の反応炉を採用し、プラズマの衝突から直接電力を取り出す仕組みを開発しています。
■ TAE Technologies 累計16億5,000万ドル(約2,558億円)を調達しました。磁場反転配位型に粒子ビームを組み合わせ、プラズマの安定性を高める技術を開発しています。また、トランプ前大統領のメディア企業との合併を発表しており、合併後の企業価値は60億ドル(約9,300億円)に達する見込みだということです。
■ Pacific Fusion 慣性閉じ込め方式を採用し、10億ドル(約1,550億円)以上の資金調達を実施したと発表しました。レーザーの代わりに電磁パルスを用いて燃料を圧縮する技術を開発しています。目標達成に応じて段階的に資金が提供される仕組みを取り入れているということです。
■ Proxima Fusion ドイツを拠点とし、ステラレータ型を開発しています。累計6億8,290万ドル(約1,058億円)を調達しました。2030年代前半に実証炉を完成させる計画です。
■ Shine Technologies 累計10億ドル(約1,550億円)を調達しました。核融合発電の前に、中性子検査や医療用アイソトープの販売、放射性廃棄物のリサイクル技術の開発から始めるという慎重な戦略をとっています。
■ Inertia Enterprises 累計4億5,000万ドル(約698億円)を調達しました。アメリカ国立点火施設(NIF)での成功を基に、レーザーを用いた慣性閉じ込め方式の商業化を目指しています。
■ General Fusion カナダを拠点とし、磁化標的核融合(MTF)方式を採用しています。累計4億4,200万ドル(約685億円)を調達しました。資金難による人員削減を経て、特別買収目的会社(SPAC)を通じた株式公開を実施したということです。
■ Zap Energy 累計3億2,500万ドル(約504億円)を調達しました。電流でプラズマを圧縮するZピンチ方式を採用しています。早期の収益化を目指し、核融合だけでなく核分裂技術や、両者を組み合わせたハイブリッド発電所の開発も進める方針を明らかにしました。
■ Tokamak Energy イギリスを拠点とし、球状トカマク型を開発しています。累計2億8,400万ドル(約440億円)を調達しました。イギリス政府の核融合プログラムに磁石を供給する計画も発表しています。
■ Focused Energy ドイツを拠点とし、レーザー慣性閉じ込め方式を採用しています。累計2億7,700万ドル(約429億円)の民間資金を調達しました。燃料ターゲットの大量生産技術の確立を目指しています。
■ Marvel Fusion ドイツを拠点とし、シリコンナノ構造を用いた慣性閉じ込め方式を開発しています。累計2億800万ドル(約322億円)を調達しました。2027年までに実証施設を稼働させる方針です。
■ Type One Energy ステラレータ型を開発し、累計1億7,450万ドル(約270億円)を調達しました。既存の石炭火力発電所の跡地に原子炉を建設し、2030年代半ばの稼働を目指しています。
■ Kyoto Fusioneering(京都フュージョニアリング) 日本発のスタートアップで、累計1億2,100万ドル(約188億円)を調達しました。原子炉本体ではなく、熱取り出しシステムなど周辺機器(バランス・オブ・プラント)の開発に特化する戦略をとっています。
■ First Light Fusion イギリスを拠点とし、累計1億4,000万ドル(約217億円)を調達しました。慣性閉じ込め方式のコア技術を他社に提供する方針に転換したということです。
■ Thea Energy 累計1億2,000万ドル(約186億円)を調達しました。多数の小型磁石と制御ソフトウェアを組み合わせることで、低コストなステラレータ型の構築を目指しています。
■ Xcimer 累計1億100万ドル(約157億円)を調達しました。NIFの技術を基盤としつつ、より強力なレーザーシステムと溶融塩を用いた反応炉の開発を進めています。
