アメリカの核融合関連のスタートアップ企業であるアバランチ・エナジーは、アメリカ国防総省の国防高等研究計画局(DARPA)から約8億600万円(520万ドル)の資金提供を受け、新たな放射線発電材料の開発を進める契約を結んだと発表しました。
核融合反応は、軽い原子同士を融合させて莫大なエネルギーを生み出す技術です。しかし、発生したエネルギーを効率よく電力に変換することが、長年の課題となっています。現在主流となっている、水を加熱して蒸気タービンを回す方式では、エネルギーの変換効率が最大でも60パーセント程度にとどまるということです。
アバランチ・エナジーは、この課題を解決するため、「放射線起電力」と呼ばれる新しい材料の開発に取り組んでいます。これは、太陽電池が光を電力に変換するように、半導体を用いて放射線を直接電力に変換する技術です。従来の材料は放射線による劣化が激しく、発電量も少ないという問題がありました。
今回、同社がDARPAと結んだ契約は、ポロニウムなどの放射性物質の放射性崩壊を利用する新型の原子力電池に、この新材料を応用することを目指すものです。宇宙船や人工衛星の長期電源としての利用や、補給が困難な環境で稼働する無人システムなど、軍事分野での活用が想定されているということです。
アバランチ・エナジーの本来の目標は、遠隔地の軍事基地などで使用されるディーゼル発電機を代替する、小型の核融合炉を開発することです。核融合反応と原子力電池は、いずれも機器に損傷を与える強力な「アルファ粒子」を発生させます。同社は、原子力電池向けに開発した新材料を核融合炉の保護材として応用し、アルファ粒子を捉えて発電量を向上させる方針です。
さらに同社は、アメリカ空軍の研究機関(AFWERX)からも約1億9400万円(125万ドル)の資金を獲得し、コンピューター解析を活用して新材料の発見を加速させるとしています。
現在、世界の核融合関連企業は、投入したエネルギーを上回るエネルギーを生み出す「ブレークイーブン」の達成に向けて開発競争を繰り広げています。アバランチ・エナジーがアルファ粒子を効率的に電力に変換する技術を確立すれば、商業的な核融合発電の実現が大きく近づくほか、他の核融合開発企業へ技術を提供する新たなビジネスモデルにつながる可能性もあるということです。
