アメリカの核融合発電のスタートアップ企業「コモンウェルス・フュージョン・システムズ」は、新たな最高財務責任者を任命したと発表しました。業界内では、同社が今後2年から3年以内に新規株式公開を行う可能性があるとの見方が出ています。
同社は、過去7年間で投資家から累計40億ドル(約6200億円)の資金を調達しており、核融合分野のスタートアップ企業として最大規模の資金力を持っています。最近でも10億ドル(約1550億円)の調達を実施したということです。
同社は今週、新たな最高財務責任者としてローレンス・キム氏を任命したと発表しました。キム氏は、2014年からアメリカの製薬大手「モデルナ」で同職を務め、2018年12月の上場を主導した実績があります。
キム氏は就任にあたり、「現在の核融合技術は、10年前のメッセンジャーRNA技術と似た状況にあります。科学的に実証されつつあり、商業化はこれからですが、一般的に考えられているよりも実用化は近い」としています。
同社の広報担当者は、キム氏の就任が直ちに上場の準備を意味するわけではないとしています。しかし、モデルナがキム氏の就任から4年半で上場したことを踏まえると、同社の上場はそれよりも早まる可能性が高いとみられています。
その理由として、核融合発電は従来の原子力発電と比べて安全性が高く、規制当局からの承認プロセスが医薬品の開発よりも予測しやすいことが挙げられています。
また、同社は実証炉「SPARC」の開発を着実に進めています。当初は2025年の稼働を目指していましたが、現在は今年後半の立ち上げを目標としています。来年までには、核融合反応を起こすために投入したエネルギーを上回るエネルギーを生み出す「科学的損益分岐点」の達成を目指す方針です。
さらに、アメリカ東部のバージニア州チェスターフィールド郡では、商業規模の発電所「ARC」の建設に向けた準備も始まっており、2030年代前半の稼働を目指して必要な許可の取得を進めているということです。
現在、人工知能向けのデータセンターの急増により、IT企業の間で電力需要が急速に高まっています。同社はすでに、最初の発電所で生産する電力の半分をアメリカのIT大手グーグルに売却する契約を結んだということです。
核融合業界では、他の新興企業も特別買収目的会社を通じた上場などの動きを見せており、同社も投資家の関心が高い現在の市場環境を捉え、上場に向けた動きを加速させる可能性があるとみられています。
