アメリカのロボット開発のスタートアップ企業「フィジカル・インテリジェンス」は、事前に学習していない作業でも指示を理解して実行できる新たなAI(人工知能)モデルを開発したと発表しました。汎用型のロボットの実現に向けた重要な一歩になるとしています。
発表された新たなAIモデル「π0.7(パイ0.7)」は、異なる状況で学習した複数の技能を組み合わせ、未知の問題を解決する能力を備えているということです。これまでロボットの訓練は、特定の作業ごとにデータを収集して記憶させる手法が一般的でしたが、今回のモデルはこの枠組みを打ち破るものだとしています。
同社の共同創業者で、カリフォルニア大学バークレー校の教授を務めるセルゲイ・レヴィン氏は、「収集したデータ通りの作業しかできない段階から、新たな方法で要素を組み合わせる段階へと限界を超えた」と指摘しています。そのうえで、「データ量に対して能力が飛躍的に向上する現象は、言語や画像などの分野で見られたものと同様だ」としています。
研究チームによりますと、訓練データにほとんど含まれていなかった調理家電のノンフライヤーを用いた実験で、モデルはインターネット上のデータなどを統合し、機器の仕組みを機能的に理解したということです。人間が段階的な音声指示を与えることで、サツマイモの調理に成功したとしています。これにより、新たな環境にロボットを導入する際、追加のデータ収集や再訓練を行わずにリアルタイムで適応できる可能性が示されました。
一方で、研究チームは現在のモデルの限界も認めています。複雑な作業を1つの大まかな指示だけで自律的に実行することはできず、現段階では人間による詳細な指示が必要だということです。また、作業が失敗する原因については、ロボットやAIモデルの問題ではなく、人間側の指示の出し方にある場合も多いとしています。
さらに、ロボット工学における標準的な評価基準が存在しないため、外部からの検証が難しいという課題も指摘されています。同社は自社の過去の専用モデルと比較し、コーヒーを淹れる、洗濯物を畳む、箱を組み立てるなどの複雑な作業において、同等の性能を発揮したとしています。
企業戦略と資金調達について、同社はこれまでに10億ドル(約1,550億円)以上を調達し、直近の企業評価額は56億ドル(約8,680億円)に上るということです。著名な投資家が参画していることもあり、市場から高い関心を集めています。
現在は、評価額を110億ドル(約1兆7,050億円)へと倍増させる新たな資金調達に向けて協議を進めていると報じられていますが、同社はこの件に関するコメントを控えています。同社は実用化の時期については明言を避けており、引き続き基盤技術の研究開発に注力する方針です。
