米国の原子力スタートアップ企業「アポロ・アトミクス」は、原子力発電のコストを大幅に削減するため、発電所の主要設備である蒸気発生器を小型化する新たな技術を開発し、実証炉の建設に向けて2600万ドル(約40億3000万円)の資金調達を実施したと発表しました。
原子力産業では現在、次世代原子炉の開発を通じてコスト削減を目指すスタートアップ企業への投資が活発化しています。しかし、既存の予測では、これらの原子炉が早期に価格競争力を持つことは難しいとされています。こうした中、同社は原子炉そのものの設計を変更するのではなく、熱エネルギーを電力に変換する仕組みを根本から見直す方針です。
同社のアシル・ハリミCEOは、「私たちは発電所で最大の設備である蒸気発生器に着目しました。この設備を小型化することで、市場にあるどの原子炉よりもシステム全体をコンパクトにすることができました」としています。
蒸気発生器は、原子炉の冷却材から蒸気を作り出し、タービンを回すための重要な設備です。従来の蒸気発生器は手作業で製造され、数階建てのビルに相当する大きさがあります。一方、同社が開発した装置は人間の背丈ほどのサイズで、大量生産が可能だということです。これにより、従来の蒸気発生器を使用する場合と比較して、原子炉全体の大きさを40分の1に縮小できるとしています。
同社は2028年の商用化を目指しており、それに先立って実証炉を建設する計画です。このため、シードラウンドで500万ドル(約7億7500万円)の負債を含む、総額2600万ドル(約40億3000万円)の資金を調達したということです。なお、同社の設計はマサチューセッツ工科大学(MIT)の研究に基づいています。
ハリミCEOは、同社の技術を用いれば発電コストを1キロワット時あたり3セント(約4.6円)に抑えられると試算しています。「原子力分野でわずかな改善にとどまるつもりはありません。私たちの目標は、天然ガスのコストを下回ることです」と述べています。
同社によりますと、既存の蒸気発生器には改善の余地が多く残されているということです。古い設計は石炭や天然ガス火力発電所の技術を流用していますが、これらの化石燃料はウランなどの核燃料に比べてエネルギー密度がはるかに低くなっています。現在の発電設備は、核燃料が持つ高い潜在エネルギーを十分に活用しきれていないと指摘しています。
一般的な蒸気発生器は、蒸気を作るための水に囲まれた太い管の中に原子炉の冷却材を通す仕組みです。これに対し、同社の装置は、針のように細い水路が張り巡らされたコンパクトな金属ブロックの中に2種類の液体を通す構造となっています。この仕組みにより、熱伝導の効率が向上し、装置の大幅な小型化を実現したということです。
装置の小型化に伴い、同社は現在の原子力発電所のように建設現場で組み立てるのではなく、工場で原子炉と蒸気発生器を製造する方針です。人件費の削減と小型化により、300メガワット級の発電所を24か月未満で建設できると見込んでいます。また、原子炉自体の製造コストも、既存の設計に比べて4分の1から5分の1に抑えられるとしています。
同社はすでに、技術を実証するため出力40キロワットの小型原子炉をMITに建設しました。今後は、出力10メガワットから300メガワットまで、3つの規模の原子炉を展開する計画です。
今回の資金調達はFCVCが主導し、Yコンビネーター、スタンフォード大学、アルムナイ・ベンチャーズなどが参加しました。
