アメリカの民間宇宙企業2社は、アメリカ宇宙軍の委託を受け、軌道上での高度な人工衛星の接近・偵察ミッションを成功させたと発表しました。宇宙空間での他国の動向を監視する能力を強化するため、民間企業の技術を活用する方針が示されています。
アメリカ軍はこれまで、他国の人工衛星の能力を把握するための偵察活動を行ってきましたが、こうした活動の規模を拡大するにあたり、民間部門の技術を活用する方針です。
この方針の一環として、宇宙開発のスタートアップ企業である「トゥルー・アノマリー(True Anomaly)」と「ロケット・ラボ(Rocket Lab)」の2社は先週、アメリカ宇宙軍のための複雑なランデブーミッションを完了したということです。この演習では、両社の人工衛星が軌道上で接近し、一方がもう一方の画像を撮影することに成功しました。
「ビクタス・ヘイズ(Victus Haze)」と呼ばれるこの演習は、軌道に到達した直後の宇宙機に接近して調査する能力を実証するものです。アメリカ、ロシア、中国などが新たな宇宙兵器の配備を進める中、こうした能力の必要性が高まっているとしています。
トゥルー・アノマリーの最高経営責任者(CEO)で、アメリカ軍の宇宙部門での経験を持つイーブン・ロジャース氏は、「中国やロシアは定期的に宇宙への打ち上げを行っており、その能力を把握することが宇宙軍の任務の一部です。現在、私たちの情報収集能力には不足している部分があります」と述べています。
今年6月に行われたミッションでは、最近通信衛星会社イリジウムの買収を発表したロケット・ラボが、通知を受けてからわずか16時間42分後に「プーマ(Puma)」と呼ばれる宇宙機を打ち上げました。通常のロケット打ち上げは数か月前から準備されるため、この迅速な対応は極めて異例だということです。
一方、軌道上ではトゥルー・アノマリーが開発した宇宙機「ジャッカル(Jackal)」が待機していました。演習の一環として、ジャッカルはプーマが宇宙のどこに到達するかを知らされていませんでしたが、搭載されたセンサーを使用して2,000キロメートル離れた場所から標的を発見し、特定しました。その後、ジャッカルは標的に接近して周囲を周回し、機体のさまざまな部分の画像を撮影したあと、軌道上の元の位置に戻ったということです。なお、標的との具体的な距離については機密とされています。
ロジャースCEOは、「NASAや宇宙軍の有人ミッションを除けば、現代の歴史において最も複雑な2機の宇宙機によるランデブーおよび近接操作だと言えます」と強調しています。
時速約2万8,000キロメートル(1万7,500マイル)に達する速度で移動する2機の宇宙機を軌道上で接近させることは、極めて困難な技術です。これまでに行われた民間企業による実証実験は、より時間をかけて行われていたということです。
両社は今後数週間のうちに、さらに難易度の高い新たな演習を行う準備を進めています。これには、ロケット・ラボのプーマがジャッカルからの接近を回避したり、独自の調査行動を行ったりする内容が含まれる可能性があるとしています。
トゥルー・アノマリーは、2019年に創設されたアメリカ宇宙軍の新たな任務を支援するため、ハードウェアとソフトウェアの両方を開発する目的で2022年に設立されました。同社の取締役を務めるエクリプス・ベンチャーズのセス・ウィンタロス氏は、「この領域における戦術や基本原則に対する深い理解こそが、当社の強みです」と述べています。
同社はこれまでに10億ドル強(約1,550億円)の資金を調達しており、今年3月には6億5,000万ドル(約1,008億円)の資金調達を実施しました。今後は、宇宙軍が民間部門の機動的な偵察能力を求めて実施する62億ドル(約9,610億円)規模の「アンドロメダ(Andromeda)」プログラムなどにおいて、受注を目指す方針です。
ロジャースCEOは、「飛行実績がすべてであり、実証された能力こそがこうした機会を得るための最大の武器になります」と述べ、今後の事業展開に意欲を示しています。
