2026年に入り、世界各地で政府機関や重要インフラ、大手企業を狙った大規模なサイバー攻撃が相次いでいることが明らかになりました。国家の関与が疑われる破壊的な攻撃や、ランサムウェア(身代金要求型ウイルス)による被害が拡大しており、社会全体に深刻な影響を及ぼしているということです。
現代社会において、サイバーセキュリティはもはや付随的な課題ではありません。気候変動や新たな感染症の脅威が懸念される中、デジタル空間での攻防が現実世界に直結する事態となっています。国家を背景としたハッカー集団が電力網や水道施設などの民間インフラを標的にしているほか、ランサムウェアを操る犯罪グループが企業から多額の資金を脅し取っています。攻撃はより大胆かつ破壊的になっており、封じ込めが困難になっているということです。
アメリカでは、イーロン・マスク氏が主導し連邦機関の再編を進める「政府効率化省(DOGE)」の活動に関連して、大規模なデータ漏えいの疑いが浮上しています。内部告発者によると、DOGEが社会保障局(SSA)のデータベースの複製を、セキュリティ対策が不十分な外部サーバーにアップロードしたとされています。このデータベースには、大多数のアメリカ国民の社会保障番号や個人情報が含まれていたということです。
社会保障局は裁判所の文書で、サーバーの正確な内容は不明であるとしつつも、DOGEが不正投票の証拠を見つける目的で外部の政治団体と協定を結んでいたことを明らかにしました。議会関係者は、これが「アメリカ史上最大のデータ漏えいになる可能性がある」と指摘しています。
ヨーロッパやアメリカでは、市民生活に直結するエネルギー施設や水道施設へのサイバー攻撃が深刻化しています。昨年から今年にかけて、ポーランドの電力網や浄水施設、スウェーデンの火力発電所などが攻撃を受けました。これらにはロシア政府の関与が疑われており、同国によるハイブリッド戦がデジタル領域を超えて展開されているとみられています。
また、アメリカとイスラエルによるイランとの対立を背景に、イラン政府の支援を受けたハッカーがアメリカ国内の重要インフラを標的にしているということです。アメリカのサイバーセキュリティ・インフラセキュリティ庁(CISA)は、資金やセキュリティ対策が不足しがちな民間の水道事業者など、100以上の施設が標的になったと発表しました。
企業向けの市場調査を提供する「Klue」では、約200社に影響を及ぼす大規模なデータ侵害が発生しました。同社はAI(人工知能)事業に注力するため、従業員を半減させる事業戦略をとっていましたが、その直後に事態が発覚しました。同社はハッカー集団とデータの非公開について合意したと顧客に説明しており、身代金を支払った可能性が高いとみられています。
IT大手「メタ」のAIチャットボットが悪用され、数万件のInstagramアカウントが乗っ取られる事態も発生しました。攻撃者は本人を装ってチャットボットにアクセスし、パスワードの再設定コードを攻撃者のメールアドレスに送信させる手法を用いていたということです。この問題は数か月にわたって続き、同社のセキュリティ体制に対する信頼を損なう結果となりました。
アメリカの政府機関も直接的な標的となっています。4月には連邦捜査局(FBI)の監視システムが不正アクセスを受け、通信傍受の対象者の電話番号などが漏えいした可能性があります。この攻撃には中国の関与が疑われています。また、8月にはアルコール・たばこ・火器及び爆発物取締局(ATF)のシステムがランサムウェアの被害に遭い、捜査対象者の情報が含まれていたことが確認されています。
オープンソースソフトウェアの開発者を狙った攻撃も多発しています。セキュリティツールや主要なプロジェクトが改ざんされ、利用者のパスワードや認証情報が盗まれました。この影響は、AI開発大手のOpenAIなど、該当ソフトウェアを利用する大手企業にも波及しているということです。
身分証明書の確認サービスを提供する「IDScan」では、アメリカとカナダの運転免許証情報1億5000万人分が漏えいした疑いがあります。各国政府がインターネット利用時の年齢確認を義務付ける法整備を進める中、本人確認システムの導入が拡大しています。しかし、こうしたシステムの安全確保が不十分であれば、さらなるデータ漏えいを招く危険性があると専門家は指摘しています。
医療分野でも被害が相次いでいます。保険会社「DentaQuest」で1500万人分、電子カルテ管理の「CareCloud」で370万人分、医療データ管理の「Aesto Health」で950万人分の患者情報が漏えいしました。
玩具大手「ハズブロ」は3月にサイバー攻撃を受け、長期間にわたってシステムが停止しました。同社はインシデントの詳細を明らかにしていませんが、業務の混乱により証券取引委員会(SEC)への四半期報告書の提出を延期するなど、財務面にも大きな影響を及ぼす事態となりました。
ハッカー集団「ShinyHunters」は、音声フィッシングなどの手法を用いて多数の企業を攻撃しています。教育IT大手の「Instructure」は、3000万人以上の学生や教職員のデータが盗まれ、期末試験の時期にシステムが改ざんされる被害を受けました。同社は連邦捜査局(FBI)の制止にもかかわらず、最終的に身代金を支払ったということです。
医療機器メーカーへの破壊的な攻撃も確認されています。3月に「Stryker」、8月に「ボストン・サイエンティフィック」がそれぞれサイバー攻撃を受け、世界規模で業務が停止しました。アメリカ政府は、これらの攻撃の背後にイランの諜報機関が関与していると指摘しています。情報の窃取を目的とした従来の攻撃から、報復を目的とした破壊的な攻撃へと戦術が変化しているとして、警戒を呼びかけています。
